電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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20年の予測 最新アップデート


~コロナ禍で21年はリバウンド成長~

2020/4/17

 2月20日発刊号の本コラムで新型コロナウイルスの感染拡大がエレクトロニクス業界に及ぼす影響を述べたが、当社はこの予測をアップデートした。

 まず、2020年の世界の電子機器生産額は前年比7.7%減になると見込まれる。この根拠として以下のように分析した。電子機器の地域別生産シェアは、中国43%、アジアほか22%、日本7%、米国15%、EMEA13%となっており、このうち新型コロナウイルスによって稼働に影響を受ける工場の比率を地域別に精査。その世界平均が31%になると予想し、これらが3カ月間、影響を受けると仮定した。

 リーマン・ショック時が8.7%減だったため、これに近い影響が出る。現時点でスマートフォン(スマホ)出荷台数の前年割れはほぼ確実で、他の電子機器にも影響が及ぶ。感染拡大の終息が遅れ、影響が3カ月以上に長引けばマイナス幅はさらに大きくなる。

 これに伴い、当社は20年の半導体設備投資の見通しも修正した。当初前年比でプラス3%を予想していたが、マイナス2%へ引き下げた。すでにサムスン電子が中国西安第2工場の3D-NAND投資計画を変更したほか、TSMCも先端投資を当初計画よりも抑制するとみているためだ。個人的には、マイナス幅は2%より大きくなる可能性があると考えている。

 半導体市場も前年割れする。年初は前年比6%増と予測していたが、8%減に下方修正した。スマホ市場がマイナスに転じることが最も大きく影響する。年初は中国メーカーからの発注が依然として旺盛だったため、半導体メーカーには実需を超える受注が舞い込んだが、スマホ市場の見通しが弱まるにつれ、3月末からキャンセルが出始めた。コロナ禍の影響は4~6月期によりはっきり見えてくるだろう。

 デバイス別に見ると、NAND以外は軒並み前年比マイナスになると見通している。NANDは、スマホへの搭載容量が予想より伸びないというマイナスの側面があるが、これまで生産量や増産投資を相当落としてきたため価格がこれ以上は下がらないと考えており、これがプラスに作用する。

 ここまでコロナ禍のマイナス影響を挙げたが、一方でプラス成長が見込める分野も少なくない。例えば、ここ1カ月で日本のデータ通信量は平均20%、海外では30%も増えている。リモートワークやビデオ会議の増加で企業側でもVPNのライセンスや帯域不足などの問題が起きており、巣ごもり消費の増加なども相まって、テレビやタブレット、モバイルPCなどの機材需要が堅調だ。

 これに伴って、データセンターへの投資が不可欠になり、ここへの投資が伸びる。デバイスに関してはDRAMの需要が堅調。新型コロナウイルスの影響はほぼ無く、サムスン電子が中国西安第2工場でのNAND投資を変更したが、韓国平澤工場での投資を継続しているのは、データセンター向け需要が強いことを裏付けている。

 今後の焦点は「新型コロナウイルスの影響からリカバリーする時期がいつになるのか」だ。現在のところ20年後半から反転するとみているが、21年のエレクトロニクス市場はリバウンドして大きく成長する可能性が高い。歴史もこれを裏付けており、例えば、リーマン・ショックで不況に陥った09年に対し、10年の半導体市場は3割伸びた。16年の不振後、17~18年の伸びも著しかった。コロナ禍の影響が大きいほど、21年のリバウンドも大きくなると考えている。

 コロナ禍によって、世界の勢力図も変わりそうだ。これまでは米中の摩擦が世界を騒がせてきたが、今後は米国+欧州と中国が対立する構図になりそうだ。欧米とも中国とも友好でありたい日本の立ち位置はさらに微妙になるが、逆に言えば日本の存在価値がさらに高まるはずだ。
(本稿は、南川氏へのインタビューをもとに編集長 津村明宏が構成した)




Omdia 南川明、お問い合わせは(E-Mail: Akira.Minamikawa@informa.com)まで。
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