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九州大学 名誉教授 尾形裕也氏


東大病院、シンポジウム・病院「再編統合」時代の一歩先を行く医療経営(2)
尾形裕也氏、医療・介護は数少ない「成長セクター」、正確な情報に基づく意思決定が重要

2020/3/31

 東京大学医学部附属病院が行った、~経営のできる大学病院幹部養成プログラム 第2回特別公開シンポジウム「病院『再編統合』時代の一歩先を行く医療経営」の講演を紹介するシリーズ2回目は、1回目の尾形裕也氏の講演の続きとなる。尾形氏は、⑥地域医療構想に関する私見、⑦新たな介護保険施設の創設の順に講演を進めた。

 尾形氏は、現在進行中の厚生労働省「地域医療構想に関するワーキンググループ」の座長を務めているが、尾形氏は、「これから述べる私見は厚労省の見解や座長としての見解ではない」としたうえで、「私自身は『強硬派』であり、地域医療構想において、都道府県により強い権限を与えるなどの方法の採用も選択肢にあったが、今回の地域医療構想は、医療提供側からの提案(医療機関の自主的選択による地域医療体制の再編・構築)であり、その実現による『ソフト・ランディング』を期待する」かたちとなっている。

 そして、2025年に地域医療構想が実現しなかった場合、医療需要に見合わない高度急性期・急性期を称する過剰な病床が存在(病床利用率の低下)、貴重な医師、看護職員などの資源が「囲い込まれ」、ニーズが増大する在宅ケアが供給不足となり、民間医療機関はおそらく敏感に対応するであろうが、公立・公的医療機関は対応が遅れる恐れがあり、その結果、「ハード・ランディング」となる可能性があることを示唆した。

 「再検証要請対象病院」の公表については、「再編統合」リストではないとし、(地域医療構想)調整会議での議論の形骸化に対する「一石」であり、さらに、424病院のみの問題とするのは「問題の矮小化」であり、1455の全公立・公的病院等について(項目チェックされた●マーク)情報が開示されている。つまり、Aで●マーク8個、Bで●マーク5個とされた病院が対象となっていないが、その病院は本当に問題ないといえるのかと疑問を呈し、424病院のみ区分するのではなく、それに近い結果の病院も連続的な問題としてとらえることを促した。

 「私見」では、2025年の「必要病床数」の推計において、高度急性期、本格的な急性期については「適切」であるが、軽症急性期、回復期については、「過大推計」の可能性、その一方、在宅ケアについては「過少推計」の可能性を指摘した。続けて、2025年ビジョンの「原型」は2008年に提案されており、給付と負担を含めて「2040年ビジョン」を視野に入れる時期が近付いていると、2025年以降を乗り切る体制構築とともに、さらに、その先を見据えて備える重要性、長期的な視点の必要性を教示した。

 ⑦新たな介護保険施設の創設では、介護医療院誕生のプロセスを解説した。療養病床の在り方等に関する検討会において、「住まいの機能」を重視した新たな類型が提案され、社会保障審議会「療養病床の在り方等に関する特別部会」の場において、具体的制度設計が検討され、2016年末に意見書が取りまとめられ、介護保険改正法が2017年5月に成立した。2015年8月の病院報告では、介護療養病床の概数は6.1万床であった。

 2019年6月末時点の介護医療院の療養床数は1万4444床(Ⅰ型1万346床、Ⅱ型4098床)で、主な転換元は介護療養病床(病院)9594床、介護療養型老人保健施設2215床、医療療養病床(2018年度改定後の診療報酬の療養病棟入院料1または2を算定している病床)1433床、医療療養病床(2018年度改定後の診療報酬の経過措置が適応されている病床)953床など。また、同じ時期の介護医療院の合計施設数は223施設(Ⅰ型146施設、Ⅱ型75施設、混合型2施設)で、主な転換元は介護療養病床(病院)140施設、介護療養型老人保健施設56施設、医療療養病床(2018年度改定後の診療報酬の療養病棟入院料1または2を算定している病床)43施設、医療療養病床(2018年度改定後の診療報酬の経過措置が適応されている病床)20施設などとなっている。

 尾形氏は、まとめとして、超少子・高齢社会、人口減少社会を乗り切るうえで医療・介護は最重要課題の1つであり、全体としては、数少ない「成長セクター」の1つという認識を提案しながらも、一定の効率化と機能分化・連携への要請、つまり適切なポジショニングの必要性を挙げ、当面の「惑星直列(滅多にない現象)」を含め、経営環境は大きく変化することになり、正確な情報に基づく意思決定が重要で、公開情報をいかに読み解くかが課題であるとして、講演を締めくくった。

(編集長 倉知良次)
(この稿続く)

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