商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
No.750

新型コロナをものともしない地方創生


笹倉聖一

2020/3/31

 自治体が地方創生に邁進している。新型コロナウイルスの恐怖をものともせずに、各県知事らが東京に赴き、トップセールスで地元産物のPRに立ち向かう姿勢は頼もしい限りだ。「あっぱれ」の声援を送りたい。

いしかわ 百万石物語 江戸本店のテープカット(中央が石川県知事の谷本氏
いしかわ 百万石物語 江戸本店のテープカット(中央が石川県知事の谷本氏)
 石川県は、東京・銀座でアンテナショップの「いしかわ 百万石物語 江戸本店」を3月6日に新装開業した。「美」をコンセプトにした内外装で、和菓子や地酒、調味料や化粧品など地元産の取り扱い商品を拡充し、伝統工芸や体験、会合などで使用できるイベントスペースも設けた。テープカットには谷本県知事のほか、県議会議長、県人会会長、地元選出の国会議員などが参列し、同県の並々ならぬ意欲がうかがえた。同県知事は「石川県のベンチャー企業と、首都圏企業とのマッチングの場としても期待している」と述べ、地元物産の販売促進だけでなく、経済活性化のための産業支援であることも強調した。県議会議長は「参集した方々が新型コロナウイルスに感染しないことを祈願する」と締めくくりの挨拶をして笑わせたのも印象的だった。

 茨城県は三菱地所とともに、東京・新丸ビル7階の「丸の内ハウス」で、2月14日~3月6日に同県食材と地酒を使ったメニューフェア「HOUSE JOURNEY JAPAN 茨城~常陸の国はラグジュアリー~」を開催した。初日の式典には、同県知事の大井川和彦氏、いばらき大使の荒磯親方(元横綱 稀勢の里)、同県出身タレントの磯山さやかさんが登場した。

荒磯親方(左)、磯山さやかさん(中央)、茨城県知事の大井川氏(右)が登場
荒磯親方(左)、磯山さやかさん(中央)、
茨城県知事の大井川氏(右)が登場
 大井川県知事は、「茨城県は観光魅力度ランキングが不動の47位だが、幸福度ランキングは11位で、日本有数の住みやすい県と自負している」と自慢、磯山さんは「メロンの出荷高は、茨城が日本一。子供の頃に、近所でいくらでも食べることができたので、まさかこんなに高級品だとは知らなかった」と会場を笑わせた。荒磯親方は「茨城の魅力は、県民の郷土愛で、人(の情)が素晴らしい」と語った。

 富山県は、JR東日本グループの鉄道会館とともに、2月3日~29日に東京駅構内の飲食店街で北陸新幹線開業5周年記念「うまさ一番 富山のさかなフェア」を開催した。JR西日本とJR東日本が連携し、北陸で初となる新幹線鮮魚輸送を行い、富山の“きときと”(新鮮な)で美味しい海の幸を東京へ迅速に届けた。同県産紅ズワイガニ姿盛り(いろり庵)、富山キトキト紅ズワイと生甘エビチラシ(築地寿司清)、富山“キトキト”鮮魚BOX(ギガス シーフード バル)などが期間中に提供された。

蟹を披露する富山県知事(左)、JR西日本・金沢支社長(左2人目)、JR東日本・東京駅長(左3人目)、鉄道会館社長(右)
蟹を披露する富山県知事(左)、
JR西日本・金沢支社長(左2人目)、
JR東日本・東京駅長(左3人目)、
鉄道会館社長(右)
 初日はKITTEでイベントを開催し、同県知事の石井隆一氏が「富山県は北アルプスと日本海に恵まれたダイナミックな地形があり、そこから豊かで清らかな水が生まれる。ちょっと一杯やりながら魚を楽しめる。東京駅の店で『富山の魚はこんなにうまいのか』と感じてもらい、『じゃあ富山へ行ってみようか』と思ってくだされば、当県とともにJRも喜び、経済は活性化する」と述べ、笑いを誘った。富山県は新型コロナの患者が発生していない(3月23日時点)稀有な県で、自然の清らかさが連想される。

 いずれの県知事も、新型コロナウイルスの騒動の中で、東京を訪れ県物産と観光をPRしていった。集まった人たちは、感染防止のマスクを着用しながらも、笑いと拍手で応えた。地元産品の流通活性化と、消費経済の活発化を促進する自治体および首長の努力を、筆者もこのコラムを書くことで応援したい。
サイト内検索