1月に、地域の手作り感あふれるマラソン大会に出場した。参加費は2000円とお財布にやさしい。今年の東京マラソンの参加費1万6200円からすると、破格ともいえるお値打ち価格だ。そんな参加費ゆえ、計測チップはなく、タイムも測ってもらえず、記録証の発行もない自己計測であるが、それもなかなか味わい深い。さらにローカル感を醸し出しているのが、地元中学生が大量出場していることだ。会場は地元の中学校グランド(決して学校内のグランドを走るわけではない)。このため陸上部はもとより、ソフトボール部、野球部など多彩なクラブからの参加あった。レース中、中学生ら何人かと競うシーンがあった最後の1kmあたりで、こちらは力尽き、彼らはあり余るパワーをラストスパートにつなげていたようだった。若さを見せつけられた瞬間だ。
一方で、レース前に、いやに目についたのが例の厚底シューズである。今年の箱根駅伝でこのシューズを履いたランナーが、区間記録を続々と更新したこともあり、俄然注目を集めた。ソールに埋め込まれたカーボンプレートの反発力を推進力に活かすものだから、「ドーピング」なんて声も上がったりするなど、一時期“厚底”議論が話題を呼んだ。それもあってか、厚底シューズを手に取るランナーが多かったのかもしれない。中年ランナーとおぼしきグループがいたが、財力にものをいわせたのか、高価なウェアにピカピカの厚底シューズを装着している。一方、中学生軍団は量販店で買ったと思われ、部活で履きつぶしているような、すり減ったナイキのシューズだ。金持ちランナーが部活中学生に抜かれるのは、なかなか痛快である。
19年の横浜マラソン。快晴のもと行われたが、17年は台風で中止になった。常に開催中止のリスクが伴う
そして去る3月1日、東京マラソンが開催された。いまいましい新型コロナウイルスの拡散防止を目的に、政府はイベントなどの自粛要請を行い、一般ランナーは走れなくなってしまった。きっと下ろし立ての厚底シューズで快走を夢見たランナーも少なくないはずだ。かくいう自身も3月1日に開催予定のハーフマラソンに出場予定だったが、中止となってしまった。
一般ランナー無しで、エリートランナーのみが走る東京マラソンは、東京五輪のマラソン代表を決める最後の1枚の切符を賭けたものとなった。大迫選手が自らの日本記録を更新した見応えのあるレースだった。しかし本当なら、東京マラソンで感じた手応えをそのまま東京五輪のマラソンにつなげていくはずだったと思う。五輪マラソンの開催地がIOCの鶴の一声て急遽、札幌になったのは記憶に新しい。
しかし、IOCの委員の1人が、新型コロナウイルス終息いかんでは東京五輪の開催自体の可否を話すものだから、さらなる混乱を招いている。新型コロナウイルス、開催地が東京から札幌に開催が決まったマラソン、そして大迫選手が履いていた新しい厚底シューズに俄然注目が集まっているのだという。シューズばかりに話題がいかなければいいが。