商業施設新聞
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No.745

米国と日本の差


岡田 光

2020/2/25

 昨秋に仕事で米国へ出張して以降、ずっと考えていることがある。それは「米国と日本の差は何なのか?」だ。国土や人口の面では比較にならない両国だが、アマゾンやトヨタ自動車など世界に名だたる企業が本社を構えており、両国が世界経済を牽引する先進国であることは間違いない。ただ、規模感(スケール)、健康への関心、物価、そして相手への配慮の気持ちなどを比較すると、日本は米国に劣っているなぁとつくづく感じてしまう。こうした答えに行き着くのは、果たして筆者だけだろうか。

巨大な造形物となるハドソンヤードの展望台
巨大な造形物となる
ハドソンヤードの展望台
 出張前の筆者は、米国のスケールについて、道路にでっかい4WD車がビュンビュン走り、レストランではものすごく大きなハンバーガーが提供される、そんなイメージを持っていた。確かに4WD車は数多く走っていたし、ものすごく大きなハンバーガーにも遭遇した。また、オキュラスでは超長いLEDビジョンが拝めたし、ハドソンヤードの展望台の巨大な造形物にも感嘆の声を上げた。すべてがデカいと思いきや、小型車に乗り込む家族連れを垣間見たし、小さなサンドウィッチを頬張る青年も見た。とかく「大きいもの」だけのイメージからかけ離れた面もあった。

 食も現地に行ってイメージが一変した。「マクドナルド」もあったが、ミレニアル世代はフルーツや野菜などを加工して提供する、ヘルシー料理店に行列を作っており、新しいムーブメントを感じた。とても一口では食べきれないようなホットドッグや、1人前とは思えないぐらい大きいピザを頬張る姿を想像していた筆者は、肩透かしを食らった。

超長いオキュラスのLEDビジョン
超長いオキュラスのLEDビジョン
 物価も現地へ赴いて驚いた点だ。とにかく何でも高い。例えば、日本のスーパーで100円前後のペットボトル飲料は、ミネラルウォーターですら2ドル40セント(約250円)前後の値段で売られている。日本の倍近い。現地では日本食が恋しくなって、日本のチェーン店が展開するラーメン店も訪れたが、トッピングの少ない通常のラーメンでも10ドルを超えた。ビールを1杯飲もうとすると、20ドル=2000円超になってしまう。

 それでも、米国人はミネラルウォーターを数本買い物かごに入れており、ラーメン店でも空席が見つからないほどの盛況ぶりだ。また、アマゾンが2017年に買収した「ホールフーズマーケット」を訪れた際も、夜7時の買い物時ではあったが、レジ待ちの客が列をなしていた。これらの光景を振り返ってみると、改めて米国の景気の良さがうかがい知れる。例え価格が高くても、その商品の価値を見出だすことができるなら、購買する客はいる。

 そして、訪米して最も印象に残っている出来事が、ホテルのエレベーターに乗る際の挨拶だ。日本ではエレベーターで人とすれ違う際、よく「すみません」と会釈するが、米国では必ずと言っていいほど「Excuse me」と声をかける。このExcuse meだが、翻訳すると日本語と同じ「すみません」だ。何の変哲もない言葉であるが、米国人はこの言葉を欠かさず使う。黙って横切ることは皆無に等しい。日本では何も言わず、エレベーターから降りて横切る人を見かけるが、米国では必ず声をかける。そこで小さなコミュニケーションが生まれ、大きな会話へと発展する時もある。日本は東京オリンピック・パラリンピックを前に、おもてなしを大事にするとよく言われるが、コミュニケーションは一方的に与えるだけでは成り立たない。互いに会話へと発展させようとする、相手への配慮の気持ちが必要だ。

 米国から学ぶことは数多くある。日本も良い文化や風習を備えているが、将来のグローバル化に向けて、他国の良いものを取り込んでいけば、世界を代表する先進国へとさらに成長できるだろう。
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