大和リース(株)(大阪市中央区農人橋2-1-36、Tel.06-6942-8011)の商業開発が転換期を迎えつつある。これまでは郊外を中心に「Frespo(フレスポ)」を展開してきたが、郊外の人口減少が著しいことから、今後は地域交流型商業施設「BRANCH(ブランチ)」や都市型商業施設「BiVi(ビビ)」の開発に注力する。「延べ床に頼らない特色ある施設づくりを行っていく」と語る森内潤一常務に、商業開発の現状や今後の展望を聞いた。
―― 商業開発の現状を。
森内 ここ2~3年は新施設の開業ラッシュで、2年間でフレスポが5施設、ブランチは9施設、複合型施設は4施設の計18施設をオープンした。当社はこれまで郊外に用地を確保し、ワンストップショッピングやショートショッピングを実現させる「フレスポ」を開発してきた。
しかし、郊外では少子高齢化や人口減少が急速に進んでおり、人口の流れが都市に向かっていることから、市街地や都市に向けた商業開発を進めている。具体例として、市街地では「ブランチ仙台」や「ブランチ横浜南部市場」、都市では「ブランチ松井山手」や「ブランチ岡山北長瀬」が挙げられる。
―― 加えて、物販だけでは難しい時代になっています。
森内 「モノからコトへ」と言われるようになり、当社では商業施設に新しいコンテンツを入れている。例えば2019年11月に開業した「ブランチ大津京」では、敷地内に延べ1.5万m²の公園を作り、公園を中心とした商業施設を開発。19年6月に開業した「ブランチ岡山北長瀬」ではコワーキングスペースを設けるなど、収益を見込まない、参加型の施設を整備した。このように、延べ床に頼らない特色ある施設づくりを行い、商業施設に来ていただくきっかけや動機づけを創出していく。
―― ブランチの特徴について。
森内 従来のNSCに、地域のコミュニティ機能を加えた商業施設である。具体的には、スーパーマーケットといった最低限の利便性施設は導入し、飲食店は全体の4分の1で、2割以上が目安だ。テナントは有名チェーン店だけでなく、その地域で頑張っている店舗、ローカルファーストのテナントを導入する。最近では地域の文化、芸術、歴史を意識したイベントなども開催している。
―― 開発のポイントは。
森内 まず土地の確保が大切だ。前述の横浜南部市場、岡山北長瀬、大津京などは、すべて公共用地の利活用で生まれた商業施設である。当社はこれまで行政機関に対して相当数の提案を行っており、一つひとつ地域に合わせてコンセプトを変えている。
例えば19年10月に開業した「ブランチ札幌月寒」では、施設中央に回廊型の公園「コポロパ」を設置した。公園内には、体育館や飲食店を整備したほか、マルシェを実施するスペースやスタッフの休憩室を設け、さらに北海道という寒い地域性を考慮し、暖炉も配置している。このように、公園はひとつのコンテンツとして捉え、投資しても構わないと思っている。
―― BiViの開発は。
森内 現在、BiViは11施設を運営しており、今後はブランチに次ぐ事業の柱へと成長させたい。その試金石となるのが、新さっぽろ駅周辺地区での開発案件だ。当社は大和ハウス工業(株)ら6者で、「(仮称)新さっぽろ駅周辺地区G・I街区開発プロジェクト」を進めているが、I街区に設ける商業施設は「BiVi」を開発する予定だ。これまでも「BiVi千里山」などを開発してきたが、今回の新さっぽろ駅周辺地区G・I街区開発プロジェクトは、BiViの新モデルとなる見通しだ。同施設は22年春の開業を目指している。
―― Park-PFIへの参画も積極的です。
森内 官と民の知恵を融合したもので、当社も様々な提案を行っている。大阪府では「(仮称)泉南市営りんくう公園整備等事業」を実施しているほか、大阪市では鶴見緑地公園の指定管理事業者に選定された。そのほか、京都市では、大宮交通公園再整備のPark-PFI事業予定者に選定され、北消防署や交通学習施設の再整備を計画している。今後、Park-PFIをブランチ、BiViに続く第3の柱としたい。
―― 今後の開発方針について。
森内 現在、フレスポは108施設(19年12月末時点)を数え、引き続き開発は進めるが、積極的な展開は難しいだろう。それに対して、ブランチは商圏が10万人で成り立つので、今後は年間3~4施設の開発を計画していきたい。直近では、福岡市に「(仮称)ブランチ博多パピヨンガーデン」を3月にオープンする予定だ。
(聞き手・編集長 松本顕介/岡田光記者)
※商業施設新聞2329号(2020年1月21日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.325