電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第361回

TSMCジャパン(株) 代表取締役社長 小野寺誠氏


5G/HPCが需要牽引
20年は最大160億ドルの大型投資

2020/2/14

TSMCジャパン(株) 代表取締役社長 小野寺誠氏
 ファンドリー最大手、台湾TSMCは「5G」「HPC」に伴う先端プロセス需要を背景に、2020年も成長を遂げそうだ。19年は下期から力強い成長局面に入り、最先端の「N7+」が量産で立ち上がった。20年はいよいよN5の立ち上げを控えており、EUVリソグラフィーを使ったプロセスも2世代目に突入する。前年に引き続き、大型の設備投資を計画しており、ファンドリー市場における存在感は揺るぎないものとなっている。日本法人社長を務める小野寺誠氏に19年の振り返り、ならびに20年の展望について伺った。

―― まずは、19年の振り返りからお願いします。
 小野寺 19年は年初から厳しい滑り出しとなった。19年1~3月期業績は、前四半期比で25%の減収となり、非常に強い調整が入った。例年、1~3月期は季節性から需要が減少するが、昨年は例年以上の落ち込みとなった。具体的には、マクロ景気の悪化やスマートフォン(スマホ)を含む広範囲なアプリケーションからの需要減、さらにはフォトレジストを起因とするウエハー汚染問題が重なった。その前の年は仮想通貨マイニングなどの特需があったが、19年はそういったものもなく、落ち込みが大きかった。

―― 一転して、下期以降は回復トレンドに入ります。
 小野寺 第3四半期売上高はガイドラインを上回るかたちとなり、特に7nm世代の需要が活況であった。HPC(High Performance Computing)を筆頭に、スマホ分野などの引き合いが強く、N7とN7+あわせて累計のテープアウト件数は3桁に達している。
 結果的には、19年通年の業績は売上高が前年比4%増の1兆700億台湾ドルとなり、プラス成長を遂げることができた。

―― 19年は設備投資も過去最高の水準となりました。
 小野寺 年初段階で100億~110億ドルを計画していたが、7/5nm世代を中心に強い需要が入ったことから、7~9月期決算発表時にこれを140億~150億ドルに増額修正し、結果として過去最高額となる149億ドルの設備投資を行った。

―― 20年の見通しをお聞かせ下さい。
 小野寺 20年もファンドリー業界にとって強いモメンタムは継続するとみており、当社では20年の市場見通しについて、メモリーを除く半導体市場を前年比8%増、ファンドリー市場を同17%増と予想しており、当社の成長率はファンドリー市場の成長率を数ポイント上回る見通しだ。

―― N5の状況について。
 小野寺 計画どおり20年上期から量産予定だ。5G、HPC関連を中心に需要が強く、20年も積極的に設備投資を行う。そのため、20年の設備投資金額も150億~160億ドルと前年を上回る水準となる見通しだ。N5以降についても、準備を進めており、N5と互換性がありながら性能が改善されている「N5P」の量産を21年から開始する。さらに、N7世代と互換性があり、EUVの適用レイヤー数を増やした「N6」も控えており、20年末までに量産を開始する予定だ。

―― レガシーノードについては。
 小野寺 28nmが直近では若干需要が緩んでいるが、今後は従来アプリケーションに加えて、プロセスのバリエーションを増やしていくことで、スペシャリティー系が増えていく見通しだ。28nm世代はプレーナープロセス最後の世代でありながら、HKMG(High-K/Metal-Gate)プロセス最初の世代であり、息の長いプロセスだ。今後も主力プロセスの1つとして、当社のビジネスに貢献していくだろう。
 200mmは19年下期以降、需要が戻っている。先端プロセス同様に、5Gがドライバーとなって、非常にタイトな状況が続きそうだ。

―― 日本国内では、新たに東京大学との協業がスタートしました。
 小野寺 日本法人では、05年から大学向けのシャトルサービスとなる、CAPアカデミー・プログラムを展開し、産学で様々な取り組みを行ってきた。今回の東京大学との協業はより大きく広範囲にわたる枠組みであり、我々にとっても非常に喜ばしく、その成果には大きな期待を持っている。

―― 最後に、国内市場での成果や今後の取り組みを教えて下さい。
 小野寺 日本法人としても、19年は半導体市場全体の影響を受けて、低調に推移した。特に自動車関連の需要低迷が響いた。20年は、これまで進めていた案件などが一部立ち上がる予定で、売り上げ的にも確実な回復を見込んでいる。

(聞き手・副編集長 稲葉雅巳)
(本紙2020年2月13日号5面 掲載)

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