電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第667回

ルビコン(株) 技術本部 電解技術部 主幹設計員 向山大索氏


電解液に独自のノウハウ
AIサーバー用電源向けで躍進

2026/3/6

ルビコン(株) 技術本部 電解技術部 主幹設計員 向山大索氏
 創業七十余年のコンデンサー老舗大手のルビコン(株)(長野県伊那市)。アルミ電解コンデンサーでは世界上位を堅持し、導電性高分子固体アルミ電解コンデンサー(PZCAP)、薄膜高分子積層コンデンサー(PMLCAP)などの新製品も続々と上市している。時流のAIサーバー向けコンデンサーでも存在感を示し、最先端開発に邁進中だ。同社技術本部電解技術部主幹設計員の向山大索氏に、AIサーバー向けコンデンサーを含む現況、製品群、強み、今後の方向性などお聞きした。

―― 貴社の概要から。
 向山 全社売上高(25年3月期593億円)のうちアルミ電解コンデンサーは約9割を占め、当社の主力製品となっている。その他、フィルムコンデンサーやカスタム電源を開発、販売している。今後伸長を期待する注力軸はPZCAP、PMLCAPなどである。展開市場は電源系32%、車載向け23%、産機向け20%、コンシューマー向け15%、残りはその他とバランスしており、強みの1つといえる。最近ではAIサーバー向けアルミ電解コンデンサーが飛躍的に伸長している。

―― 展開中のAIサーバー向け製品群は。
 向山 AIサーバーの電源入力用に、小型化・高容量化を実現した基板自立形アルミ電解コンデンサー「MXZシリーズ」を供給している。AIサーバー用電源では、突発的な停電や入力電圧低下時でもホールドアップタイム20msの間、電力を供給し続ける必要がある。この実現には大容量を蓄えられるアルミ電解コンデンサーが必須であり、MXZシリーズでは定格電圧450Vdc時に最大2510μF品(φ35×100mmサイズ)まで量産出荷を成し得ており、さらに3000μF品も開発中だ。

―― MXZシリーズの差別化点は。
 向山 最大の差別化点は、高容量化実現にあたり、陽極箔に従来のエッチング製造法を用いるエッチド箔ではなく、アルミ粉末積層箔を用い、積層箔と相性のよい独自の電解液を採用した点にある。これにより、従来のエッチド箔使用時と比較し、10~20%程度の高容量化を実現した。GPUへ0.65Vで1500Aの大電流を1秒間に10回程度給電する必要があるというAIサーバー特有のパルス負荷を強力にサポートできている。100kW級の電力量で1ラックあたりMXZシリーズ品が約50個搭載のイメージであり、現状は1ラックあたり250kW、26年末には同500kWが見込まれることを勘案すると、さらに搭載個数は増え続けるとみる。

―― 競争領域は電解液といえますか。
 向山 電解液は電圧ごとにレシピがあり、アルミ電解コンデンサーを担う各社の生命線となっている。AIサーバー向けでは電解液の比抵抗を下げること、そして陰極箔の容量を陽極箔比で100倍くらいに向上させる必要があるなどの複数の要求を同時に満たし、AIサーバーで最適に機能する設計力が求められる。当社の強みの1つでもある。

―― AIサーバー向け製品群の生産体制は。
 向山 インドネシアと日本の2工場で生産しているが、AIサーバー向けの主たる需要地に近いインドネシアでの生産がメーンとなっている。4~5年前に大型投資を断行したが、今後の旺盛な需要に応えられるよう設備投資を行い、生産体制を整えていく。

―― 一方、今後の注力軸とするPZCAP、PMLCAPについては。
 向山 前者は他社とは異なり、電解液ではない高分子液体(機能性液体)を用いた独自技術により、耐熱性が高い点が強みである。PKVシリーズ/PZKシリーズでは最大20mmLの製品長で静電容量1500μFを実現する製品もあり、産機、車載などで受注も好調だ。現在、日本で生産を行っているが、インドネシア工場での生産も開始する計画である。
 後者はフィルムコンデンサーの一種であり、真空蒸着技術を用いて製造する点が特徴である。通常のフィルムコンデサーは最小厚み2μm程度が限界だが、PMLCAPは同0.1μmなどサブミクロンの厚さ制御が可能になる。そのため、例えば同じ2μmを実現する場合、PMLCAPは電極を多く含有でき、等価直列抵抗を反比例して下げられる。また、熱伝導率はフィルムコンデンサーの2倍、小型化も図れるなどの利点も見込める。現状はオーディオ向けが主流だが、今後はハイブリッド車や電動バイク、航空機向けインバーターやドローン向けのパワー系への展開も視野に入れていく。

―― 今後も貴社の開発力に期待ですね。
 向山 29年にはAIサーバーラックへの電力供給量が1MW級まで拡大すると見込まれており、800Vdc級の直流電力が双方向に行き交うSST(ソリッドステートトランス)構成が濃厚視されている。その時にはどのような構成が主流になり、どのようなコンデンサーが最適解になっていくのかを走りながら見極めて開発していく必要がある。“電解液”という当社の強みを最大限活かしながら、時流を捉えた開発にこれからも変わらず挑んでいく。



(聞き手・高澤里美記者)
本紙2026年3月5日号5面 掲載

サイト内検索