電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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20年「供給過剰解消で価格反転へ」


~「第38回 ディスプレイ産業フォーラム」開催(1)(上)~

2019/12/13

シニアディレクター 謝勤益氏
シニアディレクター 謝勤益氏
 大手調査会社のIHSマークイットは、2020年1月30~31日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「第38回 ディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。本稿では注目の講演内容を登壇アナリストに聞く。第1回は「FPD市場総論」を担当するシニアディレクターの謝勤益(デビッド・シェー)氏に話を伺った。

 ―― 2020年のFPD市況の見通しは。
 謝 FPD需要面積の伸び率は7~8%が見込まれるが、供給面積の伸び率は3~4%と想定される。供給過剰が解消され、一部のサイズではタイト感が強まり、不足感が出る場合も考えられる。
 20年は東京オリンピック・パラリンピックをはじめとする大型スポーツイベントが世界的に目白押しで、テレビ各社はパネルの調達を増やす計画だ。しかし、韓国メーカーの減産および古い生産ラインのリストラでテレビ用液晶の生産能力が減ることに加えて、中国メーカーもテレビ用液晶の生産で初めての稼働調整を実施しており、新たなキャパシティーがあっても全力では立ち上げず、今後の能力増強をスローダウンさせる方針だ。
 これにより、早ければ旧正月後にもパネル価格が反転する。こうした見通しから、台湾ではAUOやイノラックスの株価が若干だが回復し始めた。旧正月後も値上がりが続くかはまだ不透明だが、継続するようなら、年後半にパネル各社が黒字に転換することも期待できる。

 ―― 供給過剰解消へのシナリオは。
 謝 当社では現時点で、テレビ用液晶の出荷台数が19年は2億8600万台、20年は2億6500万台になるとみている。韓国メーカーのライン再編に伴う減少に加え、台湾メーカーなども稼働調整で生産量が減るとみているためだ。
 テレビ用液晶は32インチがベンチマークだが、キャッシュコスト割れによって生産量が急減しており、主流が43インチにシフトしつつある。このため、旧正月明けにまず43インチから値上がりが始まる。次いで、韓国メーカーが8.5Gで生産してきた55インチの不足感が強まり、価格上昇につながる。
 65インチまで価格が反転するかは見通しづらいが、韓国メーカーが8.5Gで生産していたことに加え、中国メーカーも10.5G工場の稼働を調整しているため、短期的にタイト感が増す可能性が高い。

 ―― 確かに、フォックスコンの広州10.5G工場などが立ち上げ計画を延期しています。パネル価格の低迷で投資資金の調達も容易ではありませんね。
 謝 フォックスコンの広州10.5G工場は月産能力9万枚で設計され、19年7~9月期までに4.5万枚分の設備が搬入されたが、財務問題などもあって、まだ稼働していない。現時点で立ち上げは20年4~6月期からと想定しているが、正確な時期は不透明だ。仮に、本格的に立ち上げるようであれば、20年後半に向けて再び供給過剰感が強まる可能性もある。

 ―― テレビ用では、大型有機ELへの投資計画が本格的に動き始めそうですね。
 謝 LGディスプレーの広州8.5G工場は立ち上げが遅れているものの、20年初頭には稼働する。サムスンディスプレーはQD-OLEDを21年から月産3万枚で量産することを決定したものの、パネル構造やバックプレーン技術、量産プロセスなどをまだ検討中で、はっきりしてくるのは19年末~20年初頭になるだろう。
 こうした状況もあり、20年はハイエンドテレビ市場での競争が激しくなる。サムスンが展開する量子ドット液晶「QLED」、LGの「有機EL」に対抗し、中国・台湾メーカーが「ミニLEDバックライト搭載液晶」と「デュアルセル」を投入してくる見込みで、消費者の選択肢が増えそうだ。デュアルセルは液晶パネルを2枚重ねるため高コストだが、それでもミニLEDバックライトより安価だといわれる。それぞれが消費者にどのように受け入れられるか注目される。

(聞き手・編集長 津村明宏)



「第38回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はセミナー事務局(E-mail : technology.events@ihsmarkit.com、Tel.03-6262-1824)まで。
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