電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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面積成長は3年後に鈍化へ


~「第37回 ディスプレイ産業フォーラム」開催(4)~

2019/7/19

上席アナリスト 宇野匡氏
上席アナリスト 宇野匡氏
 大手調査会社のIHSマークイット(テクノロジー部門)は、7月25~26日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「第37回 ディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。注目の講演内容を登壇アナリストに聞く第4回は「FPD部材市場&コスト分析」を担当する上席アナリストの宇野匡氏に主要テーマを伺った。

 ―― 韓国への材料輸出の厳格化が大きな話題になっています。
 宇野 端的に申し上げると「高純度フッ素」の輸出量と韓国での使用量をきっちり管理するための措置と理解している。フッ素の含有量に対して線引きされており、フッ化ポリイミドは10%、フッ化水素は30%が対象になる。
 ディスプレー分野だけに限ると、ポリイミドは配向膜などに使用されているものの、いずれも10%以下であるため対象外だ。サムスンが発売予定のフォルダブルスマートフォン(スマホ)「Galaxy Fold」向けのカバーフィルム用材料が対象になると報じられたが、これも実のところ対象外と聞いている。しかも、サムスンは年内生産予定分のフッ化ポリイミドを確保済みであり、ディスプレー分野に限ると生産への影響はほとんどない。
 ディスプレー製造向けのフッ化水素に関しては、一部メーカーがLTPSラインの洗浄に使用しているようだが、これには代替策があるため問題ない。また、スマホのディスプレーモジュールを化学研磨する際にフッ化水素が使用されている。こちらは総量で問題があるが、代替策と加工場所の変更により、半導体と比較すると影響は深刻ではないと考える。
 影響があるとすれば、半導体用のフッ化水素だろう。スマホ用プロセッサーを生産する最先端ラインで使用する高純度品は日本メーカーがほぼ100%を供給しており、代替が効かない。この生産に影響が出るようだと、結果的にスマホ用の他のLSIやディスプレーの需要にも影響が及んでくるだろう。

 ―― ファーウェイ問題でも業界が揺れました。
 宇野 ファーウェイは多くの国のキャリアにサプライチェーンを広げてきたが、ブランドイメージが大きく毀損した。19年のスマホ出荷台数は当初計画の2.7億台から2億台に減少するとみている。ただし、このうち有機ELモデルはフレキシブル、リジッドともに当初計画から変更はなく、減少分はアモルファスシリコンとLTPS搭載モデルになる。

 ―― これらを踏まえて部材市場への影響は。
 宇野 ご存じのとおり、FPD生産面積の7割を占めるのがテレビであり、平均サイズの大型化によって生産面積は前年比で増える見込みであるため、面積商売である部材の需要は悪くない。10.5G液晶工場の稼働率アップで65インチが主流になりつつあり、19年も20年も、平均インチサイズは前年比で2インチ大きくなる見込みだ。
 ただし、10.5G工場への投資が一段落し、65インチ以上の普及率が高まってくる21~22年には面積ベースの成長にブレーキがかかってくると予想される。こうなるとコスト圧力が強まるため、部材メーカーはこれに備えておく必要がある。

 ―― 偏光板の需給がタイトですね。
 宇野 大型テレビの普及率が高まっているため、寸法安定性に優れたPETやアクリル、COPベースの大型偏光板は依然としてタイト感が強い。この分野は日系メーカーが圧倒的に強く、供給キャパシティーが限られており、海外製では代替が効かないためだ。

 ―― COF(Chip on Film)やドライバーICについては。
 宇野 COFは、一時は中国FPDメーカー向けが足りなくなると危惧されていたが、ファーウェイ問題に伴う需要減で、タイト感がなくなった。ドライバーICについても、半導体生産の落ち込みによって、現状では供給キャパシティーに余裕がある。当面心配はいらないだろう。

 ―― その他の部材で注目している案件は。
 宇野 サムスンがQD-OLEDの事業化・量産を検討しているが、量子ドット材料の使いこなしは難しいと聞いている。反射光への対策としてブラックマトリックスを厚くするなどの改善が必要で、プロセスを固めるのに時間を要するのではないか。
 一方で、ミニLEDバックライトは、ハイエンドモニター用に採用が広がりそうだ。ただし、コストが上がるため、有機ELとどこまでコスト競争できるかが普及拡大の分かれ目になるだろう。

(聞き手・編集長 津村明宏)



第37回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はセミナー事務局(E-mail : mitsuhiro.kato@ihsmarkit.com、Tel.03-6262-1824)まで。
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