アーバンリゾートとして知られる横浜・みなとみらい。(株)東急モールズデベロップメント(TMD)の子会社が、ここに駅直結の施設として「みなとみらい東急スクエア」を展開している。2017年10月、2つの商業施設が統合して生まれた施設であり、海が見える景観の良さや幅広いMDなどを武器に集客する。施設を運営する(株)みなとみらい東急スクエア代表取締役社長の石川哲也氏に、施設の動向などを聞いた。
―― 統合の経緯を教えてください。
石川 従前は東急百貨店グループの(株)クイーンズイーストが運営する「クイーンズイースト」と、TMDが運営する「クイーンズスクエア横浜[アット!]」に分かれていた。MDも分かれており、クイーンズイーストは衣料品や服飾雑貨で7割程度を占め、ファッションビルのようだった。クイーンズスクエア横浜[アット!]は飲食店が4割程度と、かなり多かった。この2館を統合することで、バランスが取れた幅広いMDの館になり、一体的に運営することで集客力が増すと考えた。
―― ターゲットについて。
石川 かなり幅広く想定している。みなとみらいは景観や雰囲気が良いので観光地と言える。一方で住宅やオフィスが多く、近接するパシフィコ横浜では展示会などを実施しており、これら多様な層が来館する。
そのため飲食ならフードコートの店舗から、本格的なレストランもある。アパレルは上質なセレクト系が揃うほか、周辺は結婚式場が多いことからウェディングドレスの販売店やレンタル店、ジュエリー店もある。「スヌーピータウンショップ」などキャラクター関連のショップが集積しているのも特徴だろう。
―― 統合の際、リニューアルを実施しました。
石川 「シェイクシャック」といった飲食店や物販店を導入したほか、「ZARA」の増床を行った。アパレルが難しいと言われる中、外資系アパレルは全体的に好調だ。また、3~4階はコト需要に応える店舗を誘致し、「namcoあそびパークPLUS」のほか、「丸善」を「タリーズコーヒー」の隣接区画に導入してブック&カフェとした。
―― 最近では1階にインテリアの新店が開店しました。
石川 Francfrancの新業態「MODERN WORKS」が4月23日にオープンした。インテリアを中心に揃え、ショールームのような店舗に仕上がっている。店舗の雰囲気が良く、家具やアートを買い求める人が増えている。今回、男性客の取り込みにも注力しており、実際、客層は男女が半々で30代後半~40代が多い。この辺は住宅が多いため、館内にはインテリア業態がすでに3つあるが、いずれも好調。今後が楽しみだ。
―― 隣接する横浜駅周辺では大開発が進みます。
石川 横浜駅の商業集積がますます進むが、駅の商業集積は今に始まったことではない。ただ、横浜駅だけでなく、周辺に色々な競合ができていると感じる。当館の商圏を分析すると約30km圏内で、川崎や辻堂の商業施設と重なる。ファミリー層獲得で競合するだろう。我々は統合のタイミングで「あそびパーク」を誘致したが、コト需要に加えてファミリー層を一層取り込む狙いもあり、実際効果を発揮している。
周辺の開発は進むが、みなとみらいには景観の良さがある。エリア内には最近ファミリーが増えており、当館を含めてフロアが広く、ベビーカーを押しやすい。エリア内には遊園地の「コスモワールド」もあって、様々な楽しみ方ができる。
―― みなとみらいでも多くの開発計画がありますが。
石川 エリアとして大きいのは19年に完成する客船ターミナルなどで構成する「ヨコハマハンマーヘッドプロジェクト」だろう。これまでインバウンドは都内や箱根に流れてしまっていたが、この事業により外国人客が増えていくのではないか。ホテル、オフィスビルの開発もあるし、パシフィコ横浜は増床する。周辺では住宅開発も進み、チャンスは大きい。
―― みなとみらいには商業施設は多いですが、どのように競争していきますか。
石川 当館は地下鉄の駅に併設しており、建物内に大きな吹き抜けや長いエスカレーターがあり、エリアの中で象徴的な存在だと思う。施設内から海や夜景を楽しめるし、通路が広く、売り場面積2.5万m²という数字以上に広く感じられる。この環境面をもっとアピールしていきたい。また、段階的に共用部の改修を進めており、9月までにフードコート共用部も改修する。このほかイベントの強化など、やりたいことはたくさんある。
一方で、周辺施設と協力した販促も重要。協同でみなとみらいへの来街を促す冊子の作成などをしており、まずはエリアに来ていただき、その上でみなとみらい東急スクエアの魅力を打ち出していきたい。
(聞き手・副編集長 高橋直也/若山智令記者)
※商業施設新聞2298号(2019年6月11日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.301