5月1日、元号が「平成」から「令和」に変わった。これを書いているときはまだ平成だが、今回が令和初の「独り言」になるというわけだ。令和初だからといって何か特別なことがあるわけではないのだが、日本全体に漂っている軽い高揚感は筆者も感じているところだ。
しかし、こうした高揚感も30年前に「昭和」から「平成」に変わった際には無かったと言われる。言うまでもなく、昭和天皇の崩御による自粛ムードが強かったからだ。筆者自身はまだ小学生にもなっておらず、どうだったのか全く覚えがないが、当時のテレビの映像や様々な記録などを見ると、娯楽番組はことごとく自粛されるなど、少なくとも改元直後は祝うようなムードとはほど遠かったようだ。
これに比べ、今回の改元は明るいムードに包まれている。4月1日の新元号発表は大きな注目を集め、テレビ中継には多くの人がかじりついた。当社でも会議室で中継を上映し、新元号の発表を見守った。個人の嗜好の細分化、社会の分化といった傾向が指摘される現代日本で、これほど多くの人が同じ情報に関心を寄せた機会はそうそうないだろう。
新元号は経済的効果も及ぼしている。発表されて間もなく、新元号をデザインに取り入れたシャツや雑貨、食品が多数現れた。令和の出典とされる「万葉集」が書店で売り切れるといった現象も起こり、関心が深いところまで来ていることをうかがわせる。また店舗では、新元号を冠した「令和セール」を実施するところもあるようだ。こうした動きも天皇陛下が崩御した時の自粛ムードでは起きなかっただろう。社会的な混乱を避けるだけではなく、改元を一大国民的イベントにした今回の判断は、国民生活という面から見れば大いに肯定されるものと言える。
新元号になり、滑り出しの雰囲気はおおむね良いものとなった。しかし、日本社会が抱える問題は元号が変わろうが無くなることはない。少子高齢化、人口減、経済の低成長や規模の縮小、増税による消費の鈍化など課題は山積みだ。これからは単に雰囲気にとどまらず、実効性のある対策を積み上げていかなければならない。我々も、新聞というメディアを通じて、微力ながらも様々な取り組みに貢献していきたいと思っている。