電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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FPD設備投資「19年は10%減少」


~「第36回 IHSディスプレイ産業フォーラム」開催(3)~

2019/1/11

シニアディレクター チャールズ・アニス氏
シニアディレクター チャールズ・アニス氏
 大手調査会社のIHSマークイットは、1月24~25日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「第36回 IHSディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。本稿では注目の講演内容を登壇アナリストに聞く。第3回は「FPD設備投資(需給バランス分析)&製造技術動向」を担当するシニアディレクターのチャールズ・アニス氏に話を伺った。

 ―― 2019年のFPD設備投資動向は。
 アニス 17年のピーク時に比べてかなり落ち着いている。18年の装置需要は17年比で14%減、19年については18年比10%減になるとみている。10.5G液晶工場への投資が中心で、6G有機ELへの投資は大きく落ち込む。中国では新工場の整備が続いているが、韓国が凍結しているためだ。一方で、テレビ用の大型有機EL、そしてサムスンのQD-OLEDへの投資が本格化してくる。

 ―― 10.5G液晶工場については、BOEとCSOTが各2工場、フォックスコンの広州と計5工場が建設予定ですね。
 アニス そのとおりだ。CECやHKCの計画が完全になくなったとは思っていないが、CECはまだ具体的な動きがなく、HKCは現在8.6G工場の拡張に注力している。
 すでに稼働中のBOE合肥「B9」はフルキャパシティーの月産12万枚に想定より早く達する可能性があるほど順調に稼働している。CSOTの深セン「T6」の稼働も想定より早まりそうだ。

 ―― 慢性的な供給過剰を回避するため、韓国メーカーがキャパ削減に取り組むといわれています。
 アニス サムスンが8.5G液晶ラインを19年半ばからQD-OLEDに切り替え始める見通しだ。液晶で月産14万枚分の能力をOD-OLED 3万枚分にシフトするとみている。QD-OLEDの本格量産開始は20年になるだろう。

 ―― LGディスプレーの計画はいかがですか。
 アニス 収益力が低下しているため計画が二転三転しているが、まずは中国広州の8.5G有機EL工場を立ち上げる予定で、韓国坡州P10では10.5G有機ELのテストラインを整備する投資にも着手した。ちなみに、坡州P10の10.5G有機ELでは蒸着プロセスを採用し、インクジェット(IJ)プロセスはまだ使わないとみているが、まだはっきりしていない。

 ―― そのIJ技術の将来性について。
 アニス とても注目している。LGは長く技術開発を続けており、サムスンのQD-OLEDにも必要になる。BOEとCSOTもIJでテレビ用有機ELを試作しており、CSOTは深セン「T7」工場で量産したい意向を示している。日本ではJOLEDが量産工場を立ち上げる予定だ。いずれも発光材料やプロセスに改善の余地があり、カラーフィルターを併用するつもりだが、今後の技術開発の中心テーマになると考えている。

 ―― テレビ用パネルの戦略が分かれる年になりそうですね。
 アニス 液晶が8K化を牽引するが、高解像度化によって光透過率が問題になる。有機ELは8K化が難しく、LGは88インチまで開発を発表済みだが、現在のボトムエミッションではこれより小さいサイズで8Kを実現するのが困難といわれており、ボトムエミッションを維持し続けるか、トップエミッションが実現可能かが注目される。QD-OLEDは製造技術が未成熟であるため、サムスンのVD(Visual Display)事業部はQD-OLEDとマイクロLEDとの両面で商品展開を考えていくことになるだろう。

 ―― 今回のセミナーではマイクロLEDのセッションもあります。
 アニス 私のグループでは「設備投資動向」に加えて、「マイクロLED」と「フォルダブル」を韓国のアナリストが報告する。マイクロLEDはチップの移載技術にまだまだ課題が多いが、非常に関心が高いテーマであるため、初めて市場予測を発表する。
 現在のところ、台湾勢が非常に積極的で、韓国はサムスンが商品化を進めており、中国勢も興味が高く、欧米ではベンチャーが活発に研究開発している。まずパブリックディスプレーなどの業務用から市場ができていくと考えている。日本では様々な装置・材料メーカーが開発をスタートしているが、世界に比べ遅れていると感じている。

(聞き手・編集長 津村明宏)



 「第35回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はセミナー事務局(E-mail : technology.events@ihsmarkit.com、Tel.03-6262-1824)まで。
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