電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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19年「一部の部材に不足感強まる」


~「第36回 IHSディスプレイ産業フォーラム」開催(2)~

2018/12/21

シニアディレクター 謝勤益氏
シニアディレクター 謝勤益氏
 大手調査会社のIHSマークイットは、2019年1月24~25日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「第36回 IHSディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。本稿では注目の講演内容を登壇アナリストに聞く。第2回は、前回に続いて「FPD市場総論」を担当するシニアディレクターの謝勤益(デビッド・シェー)氏に話を伺った。

 ―― 中小型パネル市場についてはいかがですか。
 謝 スマートフォン(スマホ)市場が買い替え需要中心にシフトし、市場は成長しない。そのなかで、アップルとサムスンの成長が鈍化するが、中国ブランドが伸び、価格競争が激しくなる。ファーウェイは中国No.1となり欧州でも好調、シャオミーも中国でシェアを上げインド市場の攻略に乗り出しており、これにオッポやビーボが続く。
 この状況下で有機ELの需要が伸びる。特にファーウェイが中国BOE製パネルを採用したモデルを増やす見込みだ。スマホ用フレキシブル有機ELは、まだサムスンディスプレー(SDC)が技術力・信頼性ともにNo.1だが、BOEが猛烈に追い上げている。LGディスプレー(LGD)は依然として歩留まり向上に苦戦しており、すでにBOEが信頼性や品質面でLGDを追い抜いたとの見方も出ている。

 ―― フォルダブル端末の発売も期待されます。
 謝 2019年は間違いなく「フォルダブル元年」になる。サムスンは、先ごろ公開した7.3インチの有機EL「Infinity Flex Display」をGalaxyシリーズに搭載して発売予定であるほか、ファーウェイもBOE製パネルを用いた8.3インチ端末を開発中だ。
 これにより有機EL工場の稼働率は高まるだろうが、課題は価格だ。フォルダブル有機ELパネルの価格は180~200ドル、フォルダブル端末の価格は2000ドル前後と見込まれ、非常に高価であるため、すぐには普及しないだろう。

 ―― 有機EL工場への投資再開は見込めますか。
 謝 厳しい。SDCは現状でA4工場に一部の後工程だけを実装しており、フォルダブル端末用にキャパシティーを増やす余地があるが、具体化はしていない。本当にA5へ投資するのかもまだ見えない。中国勢では、BOEが成都、綿陽、重慶への投資計画を公表済みだが、その先の投資計画は現状なく、ビジョノックスもようやく1期投資を終えたばかりだ。当面は既存ラインでの歩留まりや信頼性の向上に力を注ぐことになる。

 ―― ミニ&マイクロLEDディスプレーはどう見ていますか。
 謝 ミニLEDは19年から液晶バックライト用に量産が本格化する。すでに欧州向けの車載パネルやゲーム用モニターに搭載する話が具体化している。
 一方で、マイクロLEDはまだ時間を要する。アップルがアップルウオッチ用に開発中で、20年に量産かと噂されるが、ディスプレーとしての本格的な市場投入には技術の確立が必要になる。

 ―― FPD用部材市場の注目ポイントは。
 謝 COF(Chip on Film)と偏光板の不足が問題になるとみている。
 COFは、スマホのフルスクリーン化に加え、PC用モニターやテレビのスリムベゼル(狭額縁)化によって需要が急増しており、不足感が強い。COFメーカーは日韓台に集中しており、中国勢はまだ現地生産できていない。ドライバーICの不足とも相まって、当面足りないだろう。
 テレビの大画面化などに伴い、偏光板もすでにタイトな状況にある。アクリルやPVA(ポリビニールアルコール)、リリースフィルムなども含めて、19年は不足感が強まりそうだ。需要の中心は中国だが、中国現地メーカーはキャパシティーを持っているだけで、高品質のフィルムを安定して製造できない。日韓台の先行メーカーの強さがより際立つはずだ。

(聞き手・編集長 津村明宏)



 「第35回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はセミナー事務局(E-mail : technology.events@ihsmarkit.com、Tel.03-6262-1824)まで。
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