筆者は、ショッピングに大切なものはドキドキ感・ワクワク感だと思っている。どんな商品が売っているか、どんな商品に出会えるかなど、心を躍らせてショッピングへ向かう道のりは非常に楽しい。この楽しさを店の売り場でうまく表現していると感じるのは、雑貨大手のロフトだ。商品のセレクトや見せ方、お客さんの導線にも工夫を取り入れ、迷う楽しみを提供している。また、店だけでなく、マスコミ向け新商品発表会にも同社ならではの面白い取り組みがあり、ここでもロフトの楽しさを教えてくれた。
特に感心したのは、「クランク導線」を採用した点だ。これは什器をジグザグに置いたり、独立型什器を設置することでお客さんに“迷う楽しさ”を提供している。“迷う楽しさ”というのは言葉で説明するのが難しいが、ファッションの店ではあまり感じない。むしろ感じるのは“迷う苦しさ”だろう。これは雑貨店だからこそ、目的買いではなく、ふらっと寄って、あれこれ手に取りたいアイテムだからこそ感じる感覚であると思う。ロフトはこれを売り場で見事に表現しているので、すべての店でこのクランク導線を採用しているわけではないが、ぜひ近くのロフトに行って確かめてみてもらいたい。
また、独立型什器とは不思議なもので、陳列されている商品の訴求力が高いように感じてしまう。普段だったら見逃したり、興味が湧かないようなアイテムでも、独立型什器に並べてあると「とりあえず手に取ってみよう」と思ってしまう。まんまとロフトの戦略にハマっている気もするが、消費者目線で見てこの施策は見事だと感じた。
「ロフコレ」の商品発表会はファッションショーさながら
そして次第に年末商戦がスタートする11月、同社ではオリジナル雑貨の「ロフコレ」の商品発表会が行われた。初めてこの発表会に参加したのだが、会場は渋谷のカフェ兼イベントスペースのような場所。中央にはランウェイが準備されている。何やら雑貨の商品発表会場っぽくない雰囲気なのだが、ここで司会が登場し、合図をすると、まるでファッションショーさながら、モデルさんたちがロフコレの新商品を持ってランウェイを歩く。実にシュールな画で、呆気にとられた感じなのだが、これもロフトらしい楽しさの提供なのだと解釈してこの場を楽しんだ。
数年前、同社を取材した際、当時の社長が「ワクワク感や驚きを常に発信したい」と言っていた。この言葉が示すとおり、これからも我々消費者にワクワクドキドキする楽しいショッピング体験や、あっと驚く仕掛けを提供してほしいと思う。