商業施設新聞
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No.682

少人数ウケを狙う焼肉店開発


北田 啓貴

2018/11/20

 外食店舗の取材は、どのような店舗デザインやメニュー展開、サービスを提供し、どのような効果を狙っているのかなど、業界のトレンドを知ることができる。取材を重ねながら仮説を立て、日々分析している。そうした中、最近取材する機会が多かったのが焼肉店だ。筆者の中では、焼肉店は6~10人ぐらいの大人数で楽しむものというイメージが強いが、近年は少子高齢化などの社会構造の変化が起こり、消費の主役もファミリー層から夫婦やカップル、おひとり様などに変化しつつある中で、「単価が高くてもおいしい肉を食べたい」、「インスタ映えするような楽しそうなサービス」などの顧客ニーズに対応した焼肉店も登場してきた。

9月にオープンした会員制の「三代目 脇彦 本店」
9月にオープンした会員制の「三代目 脇彦 本店」
 例えば、大阪の福島エリアに9月にオープンした「三代目 脇彦 本店」は、お酒を提供せず、肉とタレと米の味にこだわった会員制の焼肉店だ。タレは、1918年に創業した醸造酢卸店「脇彦商店」の初代店主が、取引先などにふるまった味噌ベースの甘辛ダレを再現し、米は季節に合ったものを釜で炊いて、おひつに入れて提供してくれる。メニューは6000円と8000円(税別)の2種類のコースのみで、ドリンクメニューに至っては、お茶が2種類あるだけで、肉と米とタレの相性に徹底的にこだわる。座席は座敷など13卓を備えているが、4人までの席が多い。担当者によると、会員制の焼肉店において6000~8000円という価格帯は、他の会員制焼肉店よりは安いそうで、カップルや夫婦でちょっと贅沢したいときに利用しやすい焼肉店となっている。

「一頭買い焼肉 道頓堀みつる 心斎橋店」では日本庭園に見立てたプレートに乗って肉が運ばれる
「一頭買い焼肉 道頓堀みつる 心斎橋店」では
日本庭園に見立てたプレートに乗って
肉が運ばれる
 もう一つの例としては、大阪の心斎橋エリアで、10月にオープンした「一頭買い焼肉 道頓堀みつる 心斎橋店」だ。建物は2階建てで、1階には注文したメニューを運ぶためのレーンを導入し、目でも楽しめるエンターテインメント性あふれた店舗づくりをしている。一方、2階は全区画が個室となっており、ゆったりとくつろぎながら食事ができる。

 この2つの店舗の取材や近年の東京でも出店しつつある1人用焼肉店のブームを見ると、焼肉業界は少人数やおひとり様にターゲットの幅を広げることで、従来との差別化を図ろうとしているようだ。加えて、会員制やレーンで商品が運ばれてくるなどの付加価値をつけることで、特別感を演出している。今後の焼肉業界は、おひとり様などの少人数に支持されるメニュー開発や店舗づくりをはじめとする多様な層を獲得できるかどうかが重要になってくるということだろう。
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