電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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AIや米中摩擦の影響を検証


~11月8日にセミナー開催~

2018/10/26

 IHSマークイットは、11月8日に「エグゼクティブ・ブリーフィング2018~革新をもたらすテクノロジー、その世界的潮流とビジネスチャンスとは?」と題するセミナーを東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)で開催する。「AI」「IoT」「5G」「ブロックチェーン」など、テクノロジー業界のビジネス開拓に役立つ重要キーワードを、専門アナリストが来日して集中解説する。そのなかで「半導体産業の世界動向およびAIがもたらす影響」と題して講演予定の南川明氏に概要を伺った。

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 今回のセミナーでは、いま当社への問い合わせや調査依頼が最も多い主要トピックスを取り上げるが、私は「AI」や「米中のハイテク摩擦」が半導体市場に及ぼす影響を解説する。

 まずAIに関しては、その社会実装と普及が電力問題と密接に関連してくる。世界の電力需要がこのまま拡大し続ければ、今後10年以内に電力の需給が逼迫する。これを回避するには、サーバーの消費電力をAIチップで大幅に削減する必要がある。まずは既存のMPUやGPUがAI向けに市場を拡大するが、本命は人間の脳の仕組みを模した非ノイマン型のAIチップ(ニューロモーフィックチップ)だ。

 ニューロモーフィックチップでは、すでにIBMのTrueNorthなどが知られるが、既存のノイマン型チップよりも消費電力を1000分の1以下に抑制できる可能性があり、いま各国・各社で開発が活発化している。つまり「低消費電力」が今後のキーワードになる。当社では、こうした非ノイマン型AIチップが2027年に半導体の約8%に相当する1.5兆円市場を形成するまでに拡大するとみている。

 こうした状況から判断しても、日本のAI投資は他国に比べて少なすぎる。フランスや中国は2000億円、EU全体では2兆円もの開発費をつぎ込んでいるのに対し、日本はわずか100億円にすぎない。

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 次に、半導体に大きな影響を与える要素として、あらゆるモノが「所有から利用に変わる」ことを解説する。すでにクルマがカーシェアなどで「利用」に踏み出しつつあるが、利用に変わっても収益が成り立つビジネスモデルを検証してお話しするつもりだ。

 シェアリングによってクルマの販売台数は減少していく見込みだが、一方で高価なものほどシェアされやすいため、高級車へのニーズが高まる。シェアによって稼働率が高くなるため高級車の買い替え・交換のサイクルが早くなり、現在は当たり前である「20年の部品在庫確保」などが不要になる。こうした時代になると、当然のことながら車載半導体に求められるものも変わってくるはずだ。

 車載半導体に関して付け加えると、自動運転の実現に向けて1台あたりの半導体搭載額はまだ伸びる。ガソリン車なら200ドルだが、HV/EVは450ドル。これがレベル3になると800ドルに達し、レベル4~5を実現するには1400~1500ドルが必要になる。

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 最後に、米中のハイテク摩擦についてだが、結論から言うと、中国は当面のあいだ米国から半導体を買い続けるほかない。現在、中国で消費される半導体の半分が米国製であり、こうした状況を鑑みると、中国は米国の要求に対して今はノーとは言えない。

 これによって米国は、中国の半導体国産化、ひいては建国100年を迎える2049年に世界一の超大国になるという野望を少しでもスローダウンさせ、競争優位を長く保とうとするだろう。この過程では日本にも「半導体の購入量増加」という恩恵があるだろうが、米国が中国に対する先端の製造装置や材料の輸出を禁止・制限することも見込まれるため、一時的なマイナス影響が出ることも覚悟しなくてはならない。
(本稿は、南川氏へのインタビューをもとに編集長 津村明宏が構成した)




IHS Markit Technology 日本調査部ディレクター 南川明、お問い合わせは(E-Mail: Akira.Minamikawa@ihsmarkit.com)まで。
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