商業施設新聞
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No.675

ホテル増加。関西の立役者は


岡田 光

2018/10/2

 8月下旬に東京へ出張し、商業施設新聞が主催するホテルのセミナーに講師として参加した。今回は(株)東急ホテルズ 執行役員 事業企画部長の武井隆氏に基調講演を行っていただき、その後、本紙記者がホテルマーケットやエリア動向などについて講演を行った。私も大阪や京都のエリア動向についてスピーチしたが、参加者がスライドに見入る眼差しや、盛んにメモを取る姿を見て、改めてホテル業界の注目度の高さを感じた。遠方よりご足労いただいた方も含め、参加者の皆様には、改めて感謝申し上げたい。

USJ仕様に改装された「アートホテル大阪ベイタワー」の客室
USJ仕様に改装された
「アートホテル大阪ベイタワー」の客室
 ここ1~2年で大阪や京都の取材内容は一変した。商業施設の取材は新規案件が減り、既存施設の改装などが増える一方で、ホテルは既存よりも新規案件の取材、例えば概要説明会や内覧会などが急増した。ホテルの形態も、ビジネスホテルから外資系ホテルまで幅広く、最近はカプセルホテルや簡易宿所などの取材も行うようになった。東日本は東京オリンピック・パラリンピックの開催を見据えたホテル開発が進むが、西日本も「ラグビーワールドカップ2019」や「ワールドマスターズゲームズ2021関西」の開催を控えており、大阪万博やIRといった将来予測も踏まえ、ホテルの開発が急ピッチで進んでいる。
 大阪や京都でホテルの開発が進む理由として、訪日客の増加を挙げる人は多い。事実、大阪観光局が1月に発表した「2017年年間外客数」によると、来阪外客数は11年の158万人から右肩上がりで伸び続け、17年には1111万人となった。また、公益社団法人 京都市観光協会と公益財団法人 京都文化交流コンベンションビューローが2月に発表した「2017年外国人客宿泊状況調査(年間集計)」によると、外国人客の利用割合が40.5%に達し、年間として初の4割超えを記録。日本人客を含む客室稼働率も88.8%と、前年とほぼ同水準を維持したという。本紙「商業施設新聞」9月4日付第2260号で心斎橋をまとめたが、取材先からは「心斎橋を歩く人の8~9割が訪日客である」という声もあり、訪日客が増えていることを改めて実感した。

 しかし、私は少し見解が異なる。確かに、訪日客の増加でホテルの開発は活発化したが、それだけが要因とは言い切れない。そこには「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」の存在がある。14年に開業した「ハリー・ポッター」の新エリアや、17年に誕生した「ミニオン・パーク」などで、同テーマパークの来場者数は右肩上がりが続いている。さらに、USJは20年の東京五輪前のオープンを目指して、任天堂のキャラクターとその世界観をテーマにした、世界初となる壮大なエリア「SUPER NINTENDO WORLD」の開発も進めている。同エリアは任天堂のゲームの楽しさを体感できる広大で非常にテーマ性に溢れるエリアとなっており、600億円超という投資額からも力の入れ具合がうかがえる。こうした新エリアおよび新パークの開業は訪日客だけでなく、国内の観光客も引き寄せることになる。

 また、USJはオフィシャルホテルの拡大にも努めている。「ザ パーク フロント ホテルアット ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」や「ホテル ユニバーサル ポート」はその良い例であり、7月には7棟目のオフィシャルホテルとして、「ホテル ユニバーサル ポート ヴィータ」も開業している。これらのホテル以外にも、アソシエイトホテルとして、客室の一部をUSJ仕様に改装するホテルも出始めている。USJは訪日客も訪れるが、国内の観光客も多数訪れるテーマパークだ。訪日客だけでなく、国内の観光客も飲み込んでいるUSJこそが、大阪や京都のホテル開発を牽引しているといっても過言ではないだろう。
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