2019年9月に日本で開催するラグビーワールドカップ(W杯)までおよそ1年となった。翌20年に東京オリンピックがあるせいか、またはラグビーという競技自体が野球やサッカーほど日本においてはポピュラーなスポーツではないからなのか、そこまで大きな盛り上がりになっていないと思う。筆者はラグビー未経験者で、ルールさえもすべてを理解できていない。だから、このラグビーW杯がどれほどの意味を持つのか、開催によってどんな経済効果があるのか分からなかった。だが先日、とある取材で「訪日外国人の増加において、実はラグビーW杯ってすごいんですよ」という話を聞いた。そこで一気に興味がわき、話を伺っていくと、なるほどと思うところがあったので紹介したい。
まず、現在の訪日外国人は韓国、中国、台湾などアジア圏が中心なのだが、ラグビーW杯によって、日本政府が獲得を狙う「英語圏」、「欧・米・豪」の人たちが日本にやってくるということだ。18年9月時点のラグビーの世界ランキングは1位ニュージーランド、2位アイルランド、3位ウェールズ、4位イングランド、5位オーストラリア、6位スコットランド、7位南アフリカ、8位フランス、9位アルゼンチン、10位フィジーとなっており、以下、日本、トンガ、ジョージア、イタリア、アメリカと続く。日本は11位で、上位は「欧・米・豪」に該当する国が並ぶ。これら上位国はラグビー熱が高いため、ファンも多く、W杯ともなれば、多くの人が現地観戦に訪れる。すなわち欧・米・豪が日本にたくさんやってくるというわけだ。その中でも、とりわけ豪=オーストラリア人の訪日が多くなるという。
これを裏付ける話としてこんなことも聞いた。「前回の15年ラグビー杯はイングランドで開催されたのだが、この時、最も多く訪英したのはオーストラリア人だった」らしい。そこで、調べてみると、オーストラリアからイングランドの距離は、オーストラリアから日本の距離に比べて2倍以上もある。すなわち「日本より2倍以上距離のあるイングランドですらオーストラリア人が最も多く観戦に訪れるのだから、2倍以上近い日本だったら旅費もイングランドへ行くより安く済む。これはオーストラリア人の獲得が見込める」ということだ。安易な考え方かもしれないが、あながち間違った考え方でもないと思う。
また、東京オリンピックは基本的に東京を中心に行われるが、ラグビーW杯は北海道から九州まで全12都道府県で試合が行われる。広いエリアにわたって開催されるため、地方での経済効果も期待できそうである。ちなみに、埼玉県では「熊谷ラグビー場」を全面改修するなど、開催に向けて力が入っている。
「意外と」と言っては失礼かもしれないが、実は大きなポテンシャルを秘めているラグビーW杯。そう言えば、今年のサッカーW杯も試合前は「意外と」盛り上がっていなかったような気がしたが、ふたを開けてみれば日本は躍進し、結果的にはこれまで以上の盛り上がりになった。ラグビーW杯もスポーツの側面からの成功を願うとともに、経済面からもいい効果を与えてくれることを期待したい。