「出版不況」と言われて久しい。各社が様々な施策を打つ中で、カフェ併設店(ブックカフェ)に取り組む企業が増えている。大手カフェチェーンとの一体開発や、独自開発などやり方は色々だが、大きな違いは未購入の商品を持ち込めるかどうか。未購入の商品をカフェスペースで読めることは書店を訪れる動機として大きな武器であり、私自身その効果は徐々に出てきていると考えている。
それを強く感じたのは、福岡市にある複合施設の「六本松421」に出店した「六本松蔦屋書店」だ。同店ではスターバックスコーヒーを併設しており、金曜日の昼に訪れたにも関わらず大盛況。その中で印象的だったのは、旅行雑誌などを何冊か置きながら談笑するグループだった(その後、女性グループはその本を売り場へ戻しにいった)。「飲食は本を購入してから楽しむもの」という観念を持っていた私にとって、カルチャーショックであった。その反面で、顧客にとっては書店が図書館のように身近な場所となり、ゆったりできる空間なのかとも思った。一般的に書店では、蔵書数を確保するためにできるだけ多くの商品が並べられている。従って、ゆっくり読書ができるスペースが少ない。その分、カフェを併設することで読書スペースを確保し、さらに、未購入の本を飲食しながら読めることから、図書館よりも快適で、来店動機も生まれやすい。
だが、一方で課題もある。それは、どれだけ買い上げ点数や書店の売り上げに影響しているかということだ。統計的な数字はないものの、私自身も関西や取材エリアである九州のカフェ併設の書店を訪れる限り、本を会話のツールとして併設カフェに持ってきている人や、談笑、勉強の場として利用している人も多く見受けられた。つまり、カフェは書店の集客装置としての機能を果たしているものの、購入につながるかどうかは未知数だとも言える。
イオンモール神戸南にある
喜久屋書店のカフェ併設店。
未購入の本の持ち込みは禁じている
加えて、未購入の場合、商品のリスクをどう管理するのかという問題もある。もし、未購入の商品を汚した場合、書店と顧客で責任の所在をどうするのかはっきりさせる必要がある。こうした問題を懸念し、未購入の本の持ち込みを禁止しているカフェ併設書店も存在する。
このあたりのルール作りが難しい書店のカフェ併設の取り組みだが、読書による利用の有無に関わらず、私の見る限り集客装置としての効果は出ているようだ。書店復活のカギはまず、本に関心を持ってもらうこと。ブックカフェが書店復活の起爆剤になることを期待したい。