商業施設新聞
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No.669

2つの貴重な体験


永松 茂和

2018/8/21

 年齢を重ね、信心深くなってきたせいか、寺社仏閣へお参りする機会が増えた。記念行事にかこつけて行くと、霊験あらたかなことが増すのでないかと、その時期を見計らって行くことが多い。最近では、成田山開基1080年祭の記念大開帳を見るため、千葉県成田市の成田山に行ってきた。成田山の初詣の人出は、明治神宮に次ぐ全国第2位を誇る。今回は祭事ということもあり、多くの人で賑わっていた。普段は拝めない寺社の秘仏などを拝観したのは言うまでもない。それと同時に、日ごろはあまりできない体験をする機会にも恵まれた。

 その一つが「不動の大井戸茶会」だ。このお茶会は、成田市観光協会が主催、表千家成田市茶道会、成田山新勝寺、成田山表参道なごみの米屋の3者の後援で実施されたもの。羊羹製造において、千葉県内でおそらく知らない人はいないであろう米屋総本店内の「お不動様旧跡庭園」において開催された。着物を着た表千家の茶道会の人にお茶を点てていただき、米屋さんの和菓子とともにお茶を楽しむ。

お茶会の様子
お茶会の様子
 話によれば、お不動様旧跡庭園は、約400年前に成田という地名がつく所に初めてお不動様がご遷座され、留まった由緒ある場所といい、さらに庭園内にある不動の大井戸は、この場所にご遷座されたお不動様に、朝夕お供えした霊水を汲み上げた井戸を復元したもので、和菓子づくりや酒造りにも利用されている。当然のことながら、何気なく参加したお茶会は厳かな感じが一層強くなり、帰り際にもらったその名水は、なぜか飲むのもはばかられる感じがして、いまだに冷蔵庫の中で大切に保管してある。

 次に参加したのが「和菓子づくり体験」だ。洋菓子づくり教室は比較的多くあるが、和菓子づくりはあまりないため、貴重な体験となった。加工された材料に手を加えて和菓子を完成させるという。すでに材料が用意されているので、比較的簡単に作れるのではないかと思ったが、不器用なこともあり、そう簡単にはいかない。水をつけた手のひらで材料を素早く広げないと手にくっついたままの状態になったり、作業工程がいくつもあるため、途中の工程を忘れてしまったりする。何よりも、市販の商品のようなきれいに整った形とはいかないのである。何を隠そう、最初につくったものは、重要なあんこを入れ忘れて作り直した。

 苦戦しながらもどうにか和菓子を作り上げた。この商品がいくらで販売されているかと聞くと350円程度だというので驚いてしまった。だが、和菓子職人が、この大変な工程を一人で行っていると考えれば、この値段は理解できるものであり、街で売っている和菓子を見る目も変わってきた。

 今回の2つの体験は初めてのもので、どちらも貴重な体験となった。まだ世の中には体験したことがないものが数多くある。“50の手習い”とまではいかないが、様々なことにチャレンジする気持ちを強めたのは言うまでもない。
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