商業施設新聞
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No.666

わが街の進化


松本 顕介

2018/7/31

 商業施設新聞を発行している産業タイムズ社は、東京本社事務所を千代田区岩本町に移転して10年になる。それまでは、同じく千代田区の外神田5丁目にあった。中央通りを1本入ったところで、JR御徒町駅、銀座線末広町駅、千代田線湯島駅、大江戸線上野御徒町駅、日比谷線仲御徒町駅が利用できる利便性の高さ。上野駅、御徒町駅も、徒歩でもわけはない距離だ。そして何といっても、充実した飲食店群が最大の魅力なのである。ラーメン、天丼、親子丼、時々上野の焼き肉エリアまで足を延ばして焼き肉ランチ。火事で焼けてしまったが、老夫婦でやっていたカレー屋は食後にアイスクリームを出してくれた。とんかつの老舗、双葉亭や蓬莱屋も近くにあった。ボーナス後には、ご褒美に久保田の鰻というチョイスも。そして上野松坂屋のデパ地下――と、街全体が賑わいに溢れている。

 そして、08年5月に今の地へ移転してきたわけだ。小伝馬町、東日本橋、馬喰町、大伝馬町などと隣接し、繊維問屋やオフィスは多いが、利用駅も少なく、利便性ががくんと落ちる。また、期待した飲食店の密度は前社屋と比べると低かった。移転当時は、なぜか中華が多かった印象で、プチチャイナタウン然としていた。さらに、その後、スタバ、マックといった大手チェーンが次々と姿を消すのを目の当たりにして、定借を更新するほどエリアにポテンシャルがなく、外食不毛地帯なのかと思ったほどだ。

 だが、最近ちょっとした異変が起きている。古いビルの1階を改装したカフェが増えている。それもチェーンではない、個人経営のようなこだわりの店なのだ。入り口はガラスで開口され、中が窺える。コンクリートの打ちっぱなしのなかにシンプルな佇まいがおしゃれ感を高めている。さらにグルメバーガー、ベーグルショップも登場し、行列が絶えない。店舗が少ないせいか、こういったお店ができると、街にアクセントが生まれるようだ。さらには上層階がホステル、地下がラウンジとスタリリッシュなバー、昼はカフェ、週末にはDJが音楽をつむぐ複合施設まで現れた。1階の外には椅子とテーブルが出ていて、カフェを楽しむ光景が街に溶け込んでいる。

個性的な店が増えている当社の周辺
個性的な店が増えている
当社の周辺
 こうした個性的な店舗は街に小さいながらも彩りを与え、なにか楽しい気分にしてくれる。個性的な店が個性的な店を呼ぶ循環に入っているのか、10年経って、少しずつ魅力が生まれている。発展しているとまでは言わないが、じわりと楽しさが増えている。

 約1km先では三井不動産が日本橋室町エリアで街づくりを進めている。先日、首都高地下化事業化の予算が発表された。首都高速道路の高架がなくなり、日本橋の空が開けるなど、日本橋エリアの街づくりがダイナミックに進化する。以前、三井不動産のキーパーソンにインタビューしたところ、小伝馬町エリアも広義の日本橋と捉えているとのこと。その余波が我が街にも来ているのかと思う今日このごろだ。
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