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PC市場「ゲームと常時接続に注目」


~「第35回 IHSディスプレイ産業フォーラム」開催(4)~

2018/7/27

アソシエイトディレクター ジェフ・リン氏
アソシエイトディレクター ジェフ・リン氏
 大手調査会社のIHSマークイットは、7月26~27日にFPD市場総合セミナー「第35回IHSディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)で開催する。本稿では、国内最大の受講者数を誇る同フォーラム内容について、講演アナリストに4回にわたりインタビューする。第4回は「新たなるPC市場」を担当するアソシエイトディレクターのジェフ・リン氏に話を伺った。


 ―― ノートPCとタブレット市場の見通しは。
 リン 2018年のノートPC市場(台数ベース)は前年比0.3%減、タブレットは5.1%減になると予測している。
 ノートPCの減少要因はドライバーICとCPUにある。ドライバーICに関しては、主要ファンドリーの台湾UMCがドライバーICよりもパワーマネジメントICに注力する戦略に転換し、供給量が足りなくなることが要因。CPUも数量面に制約が出てくる。インテルの新型CPUの歩留まりが上がらず、年間生産量が5~7%減少するとみられるためだ。
 加えて、クロームブックの値上がりも減少要因になる。これまではグーグルの補助金で199ドルで販売してきたが、1月に補助を打ち切ったことで399ドルに価格が上がり、これが台数減につながる。
 タブレットに関しては、5Gインフラが整うまで通信事業者が積極的な販促活動に打って出ない見通しであることが減少要因になる。

 ―― 今後復調する見通しはありますか。
 リン 22年までを想定すると、ノートPCは、デスクトップPCの代替と、Windows7およびWindows Server 2008のサポート終了が買い替え需要を促進するため、19年以降は緩やかに出荷が増えるとみている。タブレットは減少傾向が続くが、20年の5G導入やストリーミングビデオ視聴機会の増加が需要を下支えするだろう。

 ―― そうした市場見通しのなかで注目点は。
 リン (1)Gaming note PCと(2)Always Connected PCだ。5月に開催されたコンピューター関連機器の総合展示会である「COMPUTEX TAIPEI 2018」でも、この2つは大いに注目を集めた。
 (1)は、eスポーツが22年のアジア大会で正式種目(18年はデモンストレーション開催)に採択されたことがきっかけになる。ゲームは「若者の趣味」ではなくなり、メダルを争う「競技」になるため、18年には4億人が観戦し、9億ドルの市場を生み出すと見込まれている。また、エヌビディアとAMDが7nmプロセスを採用したGPUを18年中に発売することもPCアップグレードの機会創出につながる。

 ―― Gaming note PC用のディスプレーについて。
 リン G-SyncやFreeSyncといった同期技術に対応するため、144Hz以上の高フレームレート対応のハイエンド液晶パネルが必須で、台湾AUOが高いシェアを持つ。サムスンが有機ELで認定を進めているが、まだ取得できていない。
 今後は4KおよびHDR(High Dynamic Range)への対応が求められ、これに向けてミニLEDバックライトの採用の可能性も出てくる。加えて、ノバテックやメガチップスが新型T-Conのサンプル出荷を年内に始める見通しで、19年には現在より高スペックなGaming note PCが登場すると期待している。

 ―― (2)については。
 リン スマートフォンのように、いつでもどこでもネットワークに常時接続可能なPCだ。このため、搭載されるディスプレーには省電力が求められる。すでに数社が商品化しているものの、市場はまだ極めて小さい。まずは産業用や軍事用といった特定の市場で需要が立ち上がり、5Gインフラの普及に伴って一般消費者にも拡大していければと期待している。
 ここで重要な点は、まずユーザーインターフェース(UI)が従来のキーボードからボイスアシスタント(音声入力)に変わろうとしていること。そして、現在はインテルが独占しているCPU市場にクアルコムが参入してくることだ。スマートフォン市場で巨大なシェアを持つクアルコムだが、Always Connected PCの普及を契機にPC市場でもシェア拡大を目指す。これと同様に、ベライゾンやスプリントといった通信事業者も、5G通信と絡めてPC市場へ参入する足掛かりができる。さらに言えば、マイクロソフトもインテルもクアルコムも通信事業者も、音声入力を通じてエンドユーザーのビッグデータを収集したいという共通の目的を持っている。

 ―― Always Connected PCが普及すれば、市場の様相が変わりそうですね。
 リン 今後商品化される見通しのフォルダブル端末でも、音声入力がUIのカギを握ると考えている。キーボードを必要としないのはAlways Connected PCと同じであり、入力デバイスとして将来はイヤホンやスマートウオッチを音声入力と連動させるようになるのではないか。「新たなるPC」の登場を期待したい。

(聞き手・編集長 津村明宏)



 「第35回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はセミナー事務局(E-mail : technology.events@ihsmarkit.com、Tel.03-6262-1824)まで。
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