電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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FPD部材「ドライバー不足が深刻化」


~「第35回 IHSディスプレイ産業フォーラム」開催(2)~

2018/6/29

上席アナリスト 宇野匡氏
上席アナリスト 宇野匡氏
 大手調査会社のIHSマークイットは、7月26~27日にFPD市場総合セミナー「第35回IHSディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)で開催する。本稿では、国内最大の受講者数を誇る同フォーラム内容について、講演アナリストに4回にわたりインタビューする。第2回は「LCD部材市場&コスト分析」を担当する上席アナリストの宇野匡氏に話を伺った。

 ―― 液晶テレビの出荷台数が頭打ちです。
 宇野 確かに出荷台数は2015年をピークに下がり続けているが、平均画面サイズの大型化が継続しているため、液晶の生産面積は拡大し続けている。当社の予測では、18年のテレビの平均画面サイズは43.5インチと前年比で1.3インチ大きくなるとみており、これに伴い、ガラス基板の面積需要は6%増加すると予測している。液晶パネル価格の下落で、部材メーカーへの価格圧力は強まるだろうが、「面積商売」が基本である部材メーカーにとって、18年の市況は決して悪くない。

 ―― ガラス基板市場の現状について。
 宇野 直近では日本電気硝子がシェアを上げている。中国の東旭光電とBOE福州工場向けに設立したガラス加工の合弁会社が本格稼働し、納入が拡大していることが影響している。

 ―― 東旭光電は、住友化学との偏光板事業の合弁を解消しましたね。
 宇野 住友化学が東旭の持ち分だった株式を取得することに合意した。結果として住友化学は、本来なら地元企業との合弁が求められる中国ビジネスを筆頭株主として手がけられるようになった。今後の中国市場の成長率を考慮すれば、合弁解消は住友化学にとって悪い話ではない。
 ただし、偏光板市場はいまだに中堅企業が事業を継続し、淘汰が進んでおらず、価格競争が厳しいことに変わりはない。

 ―― 液晶、有機EL、ミニ&マイクロLED向けに量子ドット材料の注目度が高まっています。
 宇野 テレビでトップシェアを持つサムスンがどの方式を採用するかが今後の需要を大きく左右する。量子ドット材料をカラーフィルターに用いるQDCF方式はインセル偏光板を要するため実現が難しいといわれており、これに代わって青色発光の有機ELを量子ドットで波長変換して赤色と緑色にするQD-OLED方式が有力視されている。ただし、現在のところサンプル開発の時期など不明確な点がまだまだ多く、予測しづらいのが実情だ。

 ―― 面積商売とは異なるという視点で、ドライバーIC市場はどうなっていますか。
 宇野 供給不足がますます深刻化しており、価格が高止まりしていることが問題になっている。IoTの普及拡大に伴う旺盛な半導体需要によって、ドライバーICが最も多く生産されている8インチシリコンウエハーが不足していることが要因だ。中国の液晶新工場のなかには、ドライバーICが確保できないため計画どおりに立ち上げができないところもあると聞いている。ドライバーICは、その大半をファブレス企業が設計し、ファンドリーが生産しているが、チップ単価が低いためファンドリーは増産に消極的で、300mmウエハーへのシフトにも乗り気でない。

 ―― 半導体需要が旺盛なだけに、不足感を解消するのは難しそうです。
 宇野 この影響で、タッチコントローラICとドライバーICを1チップにしたTDDI(Touch and Display Driver Integration)の普及率も想定ほど上がっていない。
 加えて、スマートフォンのフルスクリーン化でドライバーICのCOF(Chip on Film)実装が増えており、COFの供給能力も足りない。中国にはまだCOFの量産メーカーが無いため、中国パネルメーカーは調達に苦戦しているようだ。

 ―― ミニ&マイクロLEDディスプレーはどう見ていますか。
 宇野 LEDチップは安価だが、実装コストの高さに大きな課題がある。液晶バックライト用に実用化できればコントラストの向上などに寄与するが、チップごとのばらつきを補正するフィードバック回路など周辺部品が増加することも想定され、コンシューマー製品に搭載するような価格を実現するには相当の時間がいると思っている。

(聞き手・編集長 津村明宏)



 「第35回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はセミナー事務局(E-mail : technology.events@ihsmarkit.com、Tel.03-6262-1824)まで。
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