阪急阪神ホールディングス(株)の中核会社のひとつである(株)阪急阪神ホテルズ(大阪市北区芝田1-1-35、Tel.06-6372-5231)は、宿泊主体型ホテル「remm(レム)」の展開を図っている。すでに5店を営業中であり、今後は東京都や兵庫県で新規出店を計画している。レムの現状や今後の展開について、経営統括本部 ホテル開発部長の高田康彦氏に話を聞いた。
―― 1号店から現在までの経緯を。
高田 レムは“快眠”をコンセプトに掲げた宿泊主体型ホテルで、2007年に1号店の「レム日比谷」(255室)をオープン。その後、08年に「レム秋葉原」(260室)、11年に「レム鹿児島」(251室)、12年に「レム新大阪」(296室)をオープンし、17年3月には、六本木交差点から至近の好立地に「レム六本木」(400室)を開業している。
―― 特徴について。
高田 アッパーグレードなビジネスホテルで、シングルルーム中心の構成となる。客室の広さは15m²ほどであるが、バスタブを廃止し、代わりにシャワーブースを設置した。これにより、居住空間を広く取ることができ、宿泊者の居心地を良くする。
設備面では全室に、レインシャワーやマッサージチェアを導入。ベッドは、日本ベッド製造(株)と共同開発したオリジナルベッドマットレス「シルキーレム」を採用し、一般的なポケットコイルマットレスの倍のスプリングを使うことで、快眠をサポートする。そのほか、オリジナルバスアメニティを充実させたり、日本茶やハーブティーなどのティーバッグも備えている。
―― レムの強みや課題は。
高田 寝室とシャワールームの間をガラスパーティションで仕切るなど、コンパクトな空間の中に、広がりを感じさせるデザインを採用しているのが強みだ。また、阪急阪神ホールディングスのグループ会社として、お客様に安心感を持っていただけるのも強みと言える。おかげさまで、既存5店の稼働率はおおむね90%前後で推移しており、ビジネス客を中心に、最近は観光客にもご利用いただいている。
ただ、既存5店はロビーが狭く、客室も15m²の広さに対して、1400mm幅のセミダブルベッドを導入しているので、観光客を中心に狭いと感じるお客様もいる。そのため、客室をさらに広くした新ブランド「remm+(レムプラス)」を立ち上げた。レムプラスの1店目は19年冬に東京・銀座で開業する。
―― レムプラスの概要を。
高田 レムのコンセプトを踏襲しつつ、快適性を向上させたワンランク上のブランドとなる。メーンの客室の広さは18m²となり、ベッドサイズは幅1600mmのダブルベッドを採用した。また、一部の客室には、くつろげるスペースとしてソファを導入している。このレムプラスはビジネス客にも、観光客にも対応するホテルで、2人利用を基本とし、ADRは既存の首都圏のレムよりも1~2割引き上げたい。
―― 今後の出店は。
高田 直近では東京都中央区の京橋駅至近に新規出店を計画している。同施設はホテルやオフィスで構成される複合ビルで、地下1階地上14階のうち、ホテル部分は地上7~14階となる。7階にフロントとレストランを設け、レストランはテナントが運営する。客室数は272室を想定しており、19年春の開業を目指している。
レムプラスは、1店目となる「(仮称)レムプラス銀座」(238室)を19年冬に開業する計画のほか、建て替え中の「神戸阪急ビル東館」に出店する予定だ。今後は大都市圏の東京、京都、名古屋、博多でも新規出店を検討していく。
―― 今後の展望を。
高田 当社のホテルは、これまで30代後半~40代のアッパービジネス客やキャリアウーマンの利用が目立っていたが、最近は中国、韓国、香港、アメリカなど、海外のお客様も増えている。この4月1日で、レム事業部は「レム事業本部」として本部体制を敷いており、今後もレム・レムプラスのブランドで出店を継続する。出店立地としては、鉄道の主要駅が近いという利便性の良さはもちろんのこと、大通りに面した視認性が高い場所を重視している。
(聞き手・岡田光記者)
※商業施設新聞2244号(2018年5月15日)(7面)
インバウンド4000万人時代 ホテル最前線 キーパーソンに聞く No.23