(株)リクルート住まいカンパニーが「みんなが選んだ住みたい街ランキング2018関東版」を発表した。1位は横浜、2位は恵比寿、3位は吉祥寺。以下は、4位品川、5位池袋、6位武蔵小杉、7位新宿、8位目黒、9位大宮、10位浦和と続く。17年のランキングでは1位だった吉祥寺が3位になったこと、16年では32位だった浦和が急上昇したことなど多くのポイントがある。一方、商業記者としては1~10位の駅を見て、ある共通点に気づく。どの駅にも駅ビルがあるのだ。
トップ10のすべてに駅ビルがあるのだから、駅ビルは「住みたさ」と大きな関係があると言える。それも当然。なにせ便利だ。駅という生活動線にスーパー、ドラッグストア、雑貨、カフェ、飲食店、書店など色々な店が揃っている。筆者自宅の最寄りにも駅ビルがあるが、やはり週の半分は行く。カードのポイントもたくさん溜まっている。鉄道事業者は住民の利便性、つまりは沿線価値を向上させる機能として駅ビルの運営に注力しており、例えば東急電鉄では、東京都大田区の池上線池上駅において新たな駅ビルを開発している。
さて、今回発表されたのは「住みたい街」としてのアンケート結果だが、街とは「面」であり、駅ビルは「点」だ。駅ビルがあることが、必ずしも街全体の賑わいにつながるとは限らない。むしろ駅ビルがあることにより、駅に人が集まりすぎて、街の賑わいが減少するという意見もあるくらいだ。考えてみれば、街に人が行き交う駅と言えば東京では銀座、表参道などがあるが、いずれも駅ビルはない。ひょっとして駅ビルがない方が街は賑わうのだろうか……と思いながら「住みたい街ランキング」の順位を眺めていたら、街中が賑わっている駅があることに気づいた。
まずは5位の池袋駅。駅からサンシャインシティを結ぶ「サンシャイン60通り」は土日、平日を問わず、人でごったがえす。ショッピングセンターに例えるなら、池袋駅とサンシャインシティが核店舗、サンシャイン60通りがモールとしての2核1モール体制になっており、モール部にあたるサンシャイン60通りにも多くの人が行き交っている。7位の新宿も似た状況だ。新宿は、駅と伊勢丹を結ぶ新宿通りが2核1モール体制になっている。今、東急電鉄などが渋谷駅から代官山エリアを結ぶべく、渋谷川沿いの整備計画を進めている。さらに、渋谷駅と代官山の中間エリアに、店舗やホテルなどの複合施設「渋谷代官山Rプロジェクト」を開発している。街全体が賑わうには、こういった取り組みが必要になる。
さらに「街全体」ということを考えるならモールの部分、つまり道が重要になる。道が廃れていたり、楽しくなければ歩いてもらえず、2核1モールが成立しない。むしろ魅力的な道があれば、それ自体が目的にもなる。昨年、ニューヨークに行った際、廃線となった高架線路跡を利用した遊歩道「ハイライン」を訪れた。街並みを眺めながら歩くことができ、草木やベンチも所々にあり、コーヒーなどの売店もあった。地元の人々も多く訪れる場所と言われているが、道が人を集める好例といえる。こういった道や核となる施設づくりが街の賑わいを創出し、「住みたい街」から「住んで楽しい街」になるのだろう。