UDS(株)(東京都渋谷区神宮前1-19-19、Tel.03-5413-3941)は、小田急グループの一員として商業施設やホテル、飲食店やオフィス、公共施設などの企画から設計、運営に至るまで手がけている。最近では2019年オープン予定の、無印良品の銀座旗艦店に併設する「MUJI HOTEL」の設計・運営で注目を集める。またインバウンド関連事業者を対象としたコワーキングスペース「インバウンドリーグ」など、新しい取り組みも続々と行っている。同社代表取締役会長の梶原文生氏に、これまでの実績や強み、これからのホテル市場などについて話を聞いた。
―― 貴社の沿革から。
梶原 当社は商業施設やホテル、飲食店やシェアハウス、オフィスなど様々な施設の企画・設計から、運営に至るまで手がけている。最初は施設の企画・設計専門でスタートしたが、より良い施設を作るにはデザインだけではなく、運営に参入して目を養う必要があると考え、10年にホテルの運営に乗り出した。それ以降案件が増え、現在はホテルだけではなく飲食や商業施設など様々な施設の運営に携わっている。16年には小田急電鉄の完全子会社となったが、仕事は小田急グループ関連の施設にとどまらず幅広く行っている。
―― 貴社の強みは。
梶原 やはり企画設計から運営に至るまで、一気通貫で手がけていることだ。施設運営のノウハウがあるからこそ、運営側の視点も持った、より良い提案ができるだけではなく、クライアントの方々からも信頼感、説得力があると評価して頂いている。このように一貫して携わっている企業は国内ではほとんど無く、大きな差別化材料となっていると思う。
―― 商業関係で手がけた施設などは。
梶原 ホテルは03年に「クラスカ」を企画から経営に至るまで手がけたのを皮切りに、いくつかの施設に携わっている。「ホテルカンラ京都」は、教育施設をリノベーションしたホテルだ。元の施設は構造上どうしても客室が細長くなってしまう難しい構造を持った建物だったが、我々はこれを逆に利用し、京都の伝統的な「町屋」を表現した「マチヤスタイル」の客室としてデザインした。
商業施設では「カスケード原宿」がある。これはテナントのリーシングに至るまで携わった。また代々木の「代々木ビレッジ」では、音楽プロデューサーの小林武史氏を総合プロデューサーとして、事業発案、企画や設計などを行った。「代々木の10年後のイメージを変える」施設を目指したイメージを創出するデザインとした。
―― 銀座の「MUJI HOTEL」について。
梶原 銀座の中心地という立地はコスト面でのリスクもあり、最初はホテルを設置するかどうかも決まっていなかった。しかし、以前から良品計画の金井社長(現代表取締役会長)と「無印のホテルをやりたい」と話していたこともあり、最終的には良品計画側からの提案で、無印良品の世界観を表現したホテルを設け、我々が設計・運営を担うこととなった。無印良品ブランドの空気をどれだけ伝えられるかが重要だと思っており、客室はゴージャスでもチープでもない、コンセプトに合ったしっかりしたものを作っていく。
―― これからのホテル市場について。
梶原 国内のホテル市場で目立つのは、インバウンドによるビジネスホテルの隆盛だ。現在インバウンド頼みでないホテルも、今後の人口減少により、顧客囲い込みに成功している一部の企業以外は、国内客頼みで拡大していくのは厳しくなるだろう。
しかし、インバウンドによる好調もどれだけ続くかはわからない。訪日客数がこのまま高水準で推移していくとしても、顧客がホテルに求める質的な水準は変わっていくのではないか。その際にはこれまでのようなビジネスホテルではなく、インバウンド対策を盛り込んだり、「日本らしさ」のような他にはない魅力を持ったホテルに需要が集まると思う。中国の経済成長による観光ブームはむしろこれからであって、インバウンド需要の取り込みはますます重要になるだろう。
―― これからの抱負などを。
梶原 まず我々は、日本の人口減少について大きな危機感を持っている。人口減少により地方は疲弊し、大都市も国際的な競争に晒されており、魅力ある田舎、地方都市、大都市を作るため皆が知恵を出さなければならないと思う。こうした中での方向性としては、日本の良いところ、強さである「きめ細かさ」を活かしていくべきではないか。我々も海外のコンペでは欧米やアジアの勢力と競うことがあるが、そこではデザインだけではなく機能性や、しっかりした管理体制などの「総合力」を評価していただいている。我々はこれからもこの姿勢を貫き、これからの日本の活性化に寄与していきたい。
(聞き手・山田高裕記者)
※商業施設新聞2232号(2018年2月20日)(7面)
インバウンド4000万人時代 ホテル最前線 キーパーソンに聞く No.14