国内で商業施設、オフィスなどを運営するキャピタランド・モール・ジャパン(株)は、シンガポールに本社を置くキャピタランド・モール・アジアの日本法人だ。2017年2月、約500億円でオフィスと商業施設計4件を取得したほか、今春からオリナスの大規模改装を実施するなど積極的な投資が目立つ。同社代表取締役の竹井史代氏に今後の取り組みなどを聞いた。
――貴社の概要から。
竹井 キャピタランドグループはシンガポールや中国で商業施設、オフィス、サービスアパートメントなどを保有、運営している。商業施設は今年オープンするものを含めると計109施設になる。17年11月には中国蘇州で延べ30万m²のショッピングモールをはじめとした大型複合施設を開業した。
日本では17年2月に横浜市で2つ、東京・両国で1つ、計3つのオフィスを取得した。また、埼玉県東松山市の西友とサンドラッグで構成する商業施設も取得しており、キャピタランド・モール・ジャパンとしては「ビビット南船橋」(千葉県船橋市)「オリナス」(東京・錦糸町)など商業5物件とオフィス3物件を保有・運営している。
――ビビットの動向について。隣にはららぽーとがありますが。
竹井 何かと比べられるが、ららぽーとは何か面白いことを求めてふらりと訪れる人も多い。一方で、ビビットはターゲットモールとして目的性の高いテナントを集めて、差別化している。
これが成功しており、テナントとしては産後ケアセンターの「Mammy Camp TOKYO BAY」、託児所とワーキングスペースを併設した「ママスクエア」のほか、英会話スクールなど教育関連が特に豊富だ。また、「ゴールドジム」やフットサルコートなどスポーツ系が多いのも特徴だ。
――うまく共存できているようです。
竹井 ららぽーととは駐車場をシェアするなど良い関係を築けている。16年には同一フロアにニトリと大塚家具が出店したが、近隣にはイケアなどインテリア・家具店がいくつかある。船橋エリアにおける家具の買い回り性を創出できた。
――オリナスについて教えてください。
竹井 オリナスはニトリ、ヤマダ電機など目的性の高い店が集まる「オリナスコア」と、ファッション、シネコン、飲食などが集まる「オリナスモール」の2エリアで構成している。
オフィス棟とマンションが併設するほか、駅から近いため平日の日中も賑わっている。人気アニメのイベントなどを積極的に開催してファンづくりを行い、「行けば何か面白いものがある」という存在を目指している。
――オリナスはどのように成長させますか。
竹井 今年3月に多くのテナントの定期借家契約が切れるため、大規模な改装を実施する。ハード面でもトイレ、床、壁などを改装するため約10億円を投資する。4~8月の5カ月間で段階的に工事を実施し、9月にリニューアルグランドオープンする。
――どのような改装になりそうですか。
竹井 12年の取得以来、大規模な改装を行っていなかった。周辺の環境変化に対応した、時代やトレンドにあった業種を誘致したいし、インターナショナルブランドの導入も交渉している。
――錦糸町ではパルコが開業します。
竹井 総賃貸面積は我々の方が広く、大型店を出店しやすいのが強みになるだろう。また、オリナスはファッション、食関連、家具、家電などがあり、幅広い客層を取り込めることを活かしたい。
――今後の成長戦略は。
竹井 商業、オフィス、マンションに加え、キャピタランドジャパンとして、物流やホテル、その他のアセットクラスの取得も考えていきたい。
商業のPM業務にも取り組みたい。グループとして17年だけで中国で6件、シンガポールで1件、計7件のPMを受託した。オリナスのリニューアルは当社内の一級建築士がデザイン会社とともにマネジメントしているなど、資金調達などを含めて自社内で一連の業務を完結できることは我々の強みだ。この点を活かして商業部門を強化したい。
――かなり事業が拡大しそうですね。
竹井 組織体制も大きく変える。これまでは商業施設の運営などを担当するキャピタランド・モール・ジャパンのほか、サービスアパートメントなどを手がけるアスコットジャパンなど各事業会社が分かれていたが、本社の組織変更に伴い1月1日から、私ともう一人の人間でさらに日本における投資を推進する。各分野で投資を進める中で、キャピタランドグループ全体で成長していきたい。
(聞き手・副編集長 高橋直也/山田高裕記者)
※商業施設新聞2227号(2018年1月16日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.248