JR常磐線の松戸駅近くで営業している「伊勢丹松戸店」が、3月20日に閉店することが正式決定した。同店では、店舗の一部フロアに松戸市の施設を入居させ、テナント料として10年間で21億円を支払う支援により営業を継続することを市と協議して、議会案件にまで進んだ。しかし、市民の理解が得られず市議会で否決されたため、閉店が決まった。1974年に開業し、ピーク時には330億円規模の売り上げがあったが、最近では赤字が続き、売り上げは200億円を下回る状況で、44年の長い歴史に幕を閉じることになった。
なぜ、ここまで伊勢丹松戸店について細かく説明したかというと、自分が幼少期から青年期までの多感な時期を約20年も松戸市内で過ごし、松戸駅周辺でも印象に残っている施設の1つだからである。そもそも松戸店の新館は、“旧長崎屋松戸店”が営業していた所で、88年12月に長崎屋が閉店し、その跡地を活用して95年10月に伊勢丹松戸店の新館がオープンした。伊勢丹松戸店がオープンしたのは、確か“柏そごう”とほぼ同時期であろう。個人的には洋服などを頻繁に購入し、上層階にあった昔ながらのレストランを利用するなど、ショッピングの中心であった長崎屋の閉店は残念であったが、ちまたでは、「江戸川を越えて大手のデパートが進出してくる」と期待し、話題になったことを記憶している。
伊勢丹の閉店で分かるように、自分が育った身近な駅の周辺を見ると、消費者の購買動向の変化による街の商業施設の栄枯盛衰の変遷がよく分かる。伊勢丹と線路を挟んだ向かい側にあった、かつて家電量販店トップの“第一家庭電器”はとっくの昔になくなったし、千葉県内で百貨店を運営していた“扇屋”は駅東口で営業していたが、当時のジャスコと合併したことで、イオングループ傘下になった。また、ユニクロがなかった当時によくカジュアルショップとして活用し、“オレの店レオ”を展開していたレオは、靴チェーンのチヨダのグループ会社であるマックハウスに吸収合併され、今は店舗がなくなってしまった。
また、駅西口の少し外れには“アーバンヒル”という映画館を併設した当時としてはモダンな商業施設があり、後々には“三越”の小型店舗が入居したが、今ではマンションに変わってしまい、その面影はない。同様に西口にあるダイエーは、一時期“Dマート”の名称でディスカウントショップに業態変更したが、今では元のダイエーに戻った。そして、当時は松戸駅ビルであった“ボックスヒル”は、名称を「アトレ」に変え、時代に合った店舗にリニューアルしている。
転居してしまい、今では行く機会が少なくなったが、数年後に行った時にはまた、全く違った街になっているかもしれない。商業施設新聞では、「駅激戦区」を連載しているが、過去の歴史を含めて商業施設の変遷を追うことも必要だと実感している。