東京・調布駅前に新たな商業施設「トリエ京王調布」がオープンした。京王電鉄が駅を地下化して創出したスペースに開発した施設であり、大型の成城石井、猿田彦珈琲、ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシングなどハイクラスなテナントのほか、シネコンも出店している。調布駅は京王電鉄のターミナル駅の一つであり、同駅を魅力化することで、「住みたい沿線」「訪れたい沿線」につながるはずだ。そんな中、トリエ京王調布について「おや?」と思ったことが一つある。ビックカメラが出店したことである。
ビックカメラは同施設の目玉テナントの一つであり、エリアとしても家電量販店が不足していたため出店に至った。ところで、都内における他のビックカメラの所在地を見ると、池袋、有楽町、新宿、秋葉原、渋谷、八王子、赤坂、立川、町田といったターミナル駅や都心である。多摩市の聖蹟桜ヶ丘駅前にも出店しているが、同駅は西東京では指折りの商業集積エリア。調布駅は、主だった商業施設はパルコ以外ない。ビックカメラは、商業集積が進む立地や、よほど人通りが多い立地でなければ出店しないと思い込んでいたため、調布駅への出店は意外だった。
「ビックカメラ京王調布店」は
色々な意味でこれまでと違った店といえる
しかも売り場をみると、1階には酒、スポーツ用品を展開するなど、都心ターミナル駅の店とは違ったコンセプトで、より客層を広げようとしているのだろう。思えば家電量販店業界は、ここ数年の変化が激しい。エコポイントによる需要先食い、ロードサイド店の苦戦、ネット通販が普及したことによるショールーム化……。様々な外部環境に対応するために、これまでと違った店舗のあり方が求められている。その一つが「大ターミナル駅」ではなく「中ターミナル駅」へ出店し、商材も広げた店なのかもしれない。(株)ビックカメラは2012年に(株)コジマを子会社したが、コジマはロードサイド店が多く、近隣住民などを対象とした小~中規模商圏が得意だ。今後もビックカメラとしては、中ターミナル駅への出店が増えるかもしれない。
思えば、これまでのやり方を変えてきた企業や店が増えている。最近ではGMSのユニー(株)が(株)ドンキホーテホールディングスの力を借りて再生することが発表された。もしも20年前に、「将来、ユニーはドンキに再生を託すに違いない」と言って、信じる人がいただろうか。そもそもGMSがここまで苦戦すると予測する人すら少なかったのではないだろうか。一方で、(株)丸井が「商品サンプルを店舗に展示、商品はタブレットで購入して自宅へ配送」という、あえてショールーミング化した店舗を広げている。「ショールーム化はリアル店舗の敵だ!」と捉える風潮もあるが、今後は固定観念を覆した店が求められるのだろう。