本コラムのNo.554「消費者に支持されるのは」で、ユニー(株)のGMS事業を取り上げたが、この1年半で同事業もだいぶ様変わりした。これまでは直営重視の売り場づくりを行ってきたが、最近は新規テナントの誘致を積極的に進めており、先ごろオープンした「ラ フーズコア納屋橋店」では、食料品売り場にもテナントを導入。同店は「従前の総合から日常生活に特化した店舗」(佐古則男社長)と話していたが、失われつつあるユニーのブランド力に寂しさを感じるのは筆者だけであろうか。
佐古社長は就任当初より“五十貨店化”の推進を口にしていた。百貨店のように幅広い商品を取り扱うのではなく、寝具や化粧品など、成長の見込めるカテゴリーに特化して、品揃えを強化するというものである。確かに、旧来のGMSは“何でもあるが、何にも買いたくない店舗”の代名詞であったことから、成長の見込めるカテゴリーに特化するのは正しい選択だと思う――それが自前であれば。しかし、最近オープンした同社の店舗は、成長の見込めるカテゴリーに特化しているものの、自社の仕入れ力や品揃え力を前面に押し出すのではなく、テナントの集客力や商品力に頼っている感は否めない。
例えば、2月にリニューアルオープンした「アピタ新守山店」。16年間営業を続けてきた同店に、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)(CCC)がプロデュースした「草叢ブックス」を専門店として導入した。草叢ブックスはTSUTAYA、ドラッグユタカ、ホットヨガスタジオLAVA、レストランコートなどで構成され、リニューアルオープン当日はたくさんのお客さんが集まっていた。それに対し、同店の反対側に位置する直営の衣料品売り場は閑散としていた。この草叢ブックスは「アピタ各務原店」にも導入しており、今後も他のアピタに導入することが予想される。ユニーの開発担当者は、アピタ新守山店で「草叢ブックスを導入したのは、新たなライフスタイルを提案するため」と説明していたが、CCCの集客力に頼っているのは一目瞭然だ。
そして、9月にオープンした「ラ フーズコア納屋橋店」では、これまであまり手を打ってこなかった食料品売り場にメスを入れた。具体的には、精肉売り場に肉の専門店「スギモト」を配置したほか、鮮魚売り場には鮮魚専門店「魚力」を同社施設で初めて導入。「食料品売り場にテナントを導入しているが、この理由について聞かせてください」という記者の問いに、ユニーは「店舗の周辺に市場や専門店が多いため、確実に実需を取るため、専門店に出店していただいた」と説明した。裏を返せば、自分たちが作る食料品売り場では、周辺の市場や専門店に勝てないという、敗北宣言を示唆していたとも言える。ユニーを6年間見続けてきた筆者としては、もの悲しさや悔しさを感じずにはいられない。
親会社のユニー・ファミリーマートホールディングス(株)は8月に、(株)ドンキホーテホールディングスと資本・業務提携に係る基本合意書を締結した。この資本・業務提携ではユニーの既存店をダブルネームで展開する新業態店へ転換するほか、閉店する店舗に関しては、ドンキホーテホールディングスが運営するブランドへ転換するという。この発表を読んで、筆者は「ついにドンキも入れてしまうのか」と思わずつぶやいてしまった。専門店を積極的に導入するのは構わないが、ユニーというブランドを後世に残していけるのか、正直なところ不安を感じている。小売業の厳しい環境はよく分かるし、他社との協力や提携は必要な施策だと思うが、だからと言って、己を、ユニーを磨くことを忘れてはならない、そう佐古社長にお伝えしたい。