商業施設新聞
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No.627

くつろげるカプセルホテル


山田 高裕

2017/10/10

 訪日観光客(インバウンド)の増加、2020年の東京五輪などの影響から、ホテル新設の活況が取り上げられて久しい。しかし最近は、五輪後の市場縮小によってホテルが供給過剰となり、設備投資が回収できなくなる企業が出てくるのではないかと噂されている。こうした中で注目を集めているのが、カプセルホテルのような簡易宿泊所業態だ。

 カプセルホテルという宿泊業態の歴史はそれなりに長く、1979年に第1号が開業して以降、ビジネスマンなどを主な利用者として現在まで存続してきた。しかしイメージとしては、80~90年代のカプセルホテルの実態を反映した、「狭苦しい」「不衛生」といったようなものが強かったが、最近はこういったイメージを覆す高級感、独自のコンセプトを持つ「高級カプセルホテル」が増えている。

「安心お宿」新橋汐留店のラウンジ
「安心お宿」新橋汐留店のラウンジ
 こうした高級カプセルホテルの一つである、ニュートングループが運営する「安心お宿」に、筆者も泊まってみたことがある。出張先で泊まったとか、終電を逃したといったことではなく、ちょっとした非日常感を味わいたかったがために試したので、正直「くつろぐ」といった面では期待していなかったが、これが存外にすばらしかった。

 まず、「寝室」ともいうべき最も重要なカプセルだが、就寝するのに十分な広さを備えるのはもちろん、寝具の質も良好だ。従来のカプセルホテルでは換気や清掃が不十分だったり、空調が極端で喉を痛めたりということがあったが、そのような心配もなく快適だ。隣のカプセルからのいびきや騒音が聞こえてくるというのはカプセルホテルの構造上避けられないが、それほど大きくはなく気にならなかった。またカプセル内に無料で使えるタブレットや携帯充電器、ミネラルウォーターが備え付けられているといった細やかなサービスもうれしい。

 また、共用部のラウンジには飲み放題のドリンク・味噌汁、マッサージチェア、ネットカフェのような個室PCブースまで備え付けられており、充実した時間を過ごすことができる。大浴場も清潔で広く、人工温泉を用いた湯船では十分に足を伸ばすことができた。アメニティの質も一般的なホテルと変わらず、これは確かにリピーターがつくのも納得できるクオリティだと感じた。

 このように高いクオリティで好評を博している高級カプセルホテルだが、施工コストについてはビジネスホテルよりもずっと安い。またオフィスビルからのコンバージョンなど、遊休物件の活用先として営業している施設も多く、立地・条件を選ばないという利点もある。

 この先市場の縮小が心配されているホテル業界において、出店・撤退がしやすく集客力もある高級カプセルホテルは、これからの出店のカギとなっていく業態と言えるだろう。
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