ハロウィンが日本で定着して何年経つのだろう。知らぬ間にというべきか、気がついたら毎年の恒例行事になっていたと感じるし、実際にそう思っている人も多いはずだ。なぜ、ハロウィンはここまで日本の文化に溶け込み、フィットできたのだろうか。
そもそも、ハロウィンとは。簡単にいうと、毎年10月31日に秋の収穫を祝うと同時に悪魔を祓うためのお祭りで、西ヨーロッパの先住民であるケルト人が起源であるようだ。ケルト人の文化では、11月1日が新しい年の始まりとされ、この前日にあたる10月31日に収穫祭を行うといった習わしからきている。あのカボチャの「ジャック・オー・ランタン」にも、魔除けの火といった役割があるそうだ。
このお祭りの本来の意味だけを聞くと、とても日本で根づくとは思えない。だが、ハロウィンの規模は年々拡大しており、2016年の推計規模(一般社団法人日本記念日協会記念日文化研究所調べ)は約1345億円で、同じ年のバレンタインデーの約1340億円を凌ぐほどになっている。ありのままのハロウィンを受け入れたのではこの市場規模にまで大きくならなかっただろうし、ここまで成長したのは、街づくりや町おこしの一環としてハロウィンに取り組んだ商業デベロッパーや、商機と捉えて積極的な商品展開や情報発信を行った小売事業者の努力もある。
例えば、川崎市では日本最大級のハロウィンイベントが行われている。メーン会場となるのは川崎駅東口の商業施設「ラチッタデッラ」で、街づくりのひとつとしてスタートした。以前は東口エリアでのみ開催されていたが、ここ2~3年で西口の「ラゾーナ川崎プラザ」なども参加し、駅周辺エリア全体でハロウィンイベントを盛り上げている。単館の商業施設やショッピングセンターでも、各館それぞれのハロウィンイベントが開催され、集客にも大きなインパクトを与えている。
また、街全体といえば、テレビでも毎年取り上げられる渋谷。ここはもはや、イベントという概念では収まりきらない、ライフスタイルのひとつともいえるほど、まるで当たり前のように多くの人で賑わう。単なるコスプレにも見えるが、これが日本で独自の進化を遂げたハロウィンの過ごし方なのだろう。
なお、日本でのハロウィンイベントの先駆けは、1983年にキディランドが主催したハローハロウィンパンプキンパレードというイベントだそうで、表参道を仮装した人々が練り歩くというものだったらしい。さすが、原宿ともいうべきカルチャーだと思う。その後、ディズニーランドのハロウィンイベントなどを機に一気に広まり、今日のハロウィンへとつながっている。
小売店では、夏が終わり、秋を感じ始めるころになると、店頭にはハロウィングッズが並べられる。しかも、年末商戦前の稼ぎ時として、売り場の一番目立つところに商品を並べている店も少なくない。古くは「ソニプラ」などの輸入雑貨店あたりでしか見なかったが、今ではシーズンともなればごく自然に陳列されている。先日、たまたま通りかかった「プラチナドン・キホーテ白金台店」でも、店頭にはハロウィン関連グッズが並べられていた。
今年も全国各地でハロウィンイベントが開催されるだろう。筆者は街にくり出すわけでもないし、あまりこの手の行事には明るくない。ただ、こうした新しい文化が生まれ、消費にも影響を与えるならば、それは大変喜ばしいことであると思っている。