商業施設新聞
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第96回

(株)京ろまん 代表取締役社長 郡史朗氏


気軽に立ち寄れる着物店
お洒落な店づくりで新規集客

2017/9/19

(株)京ろまん 代表取締役社長 郡史朗氏
 (株)京ろまん(奈良市油阪地方町6-4、Tel.0742-27-8400)は、きもの専門店や写真スタジオを中心に展開している。店づくりへのこだわりについて、同社代表取締役社長の郡史朗氏に話を聞いた。

―― 貴社の歩みから。
  1986年に大阪で設立し、京都を経て89年に奈良へ本社を移転した。その後、奈良で着物の専門店を4店出店して多店舗化し、営業基盤を固めていった。2003年には新たな業態として、振袖レンタルや写真スタジオを複合化した新業態「ファーストステージ」を開店。以降、様々な店舗開発に力を入れ、「舞STYLE」「和優館」など着物に関する様々なニーズに対応した業態を展開している。現在は24店(グループの(株)百花含む)を展開しているほか、ファーストステージは既存のきもの専門店10店でも取り扱っている。

―― きもの専門店の各業態の特徴を。
16年11月に開店した「舞STYLE ならファミリー店」は1階の入り口付近に出店
16年11月に開店した
「舞STYLE ならファミリー店」は
1階の入り口付近に出店
  「舞STYLE」「和優館」「きもの満足館」は、フォーマルな訪問着や普段着のお洒落着物など幅広いシーンに対応し、伝統的な着物の魅力を味わえる商品を取り扱っている。中でも「舞STYLE」は従来の呉服店のイメージを一新する店舗デザインで、関西の有力SCに出店している。
 一方、関東のSCを中心に出店している「百花」は、“大人の和のセレクトショップ”をテーマに、よりスタイリッシュな店づくりで、オリジナル性の高い商品の販売を主体に展開している。また、「小町カレン」は、カジュアルでポップな着物の楽しみ方を提案するスタイルが特徴で、普段使いできる洗える着物や、低価格な商品群を得意としている。
 最近では、奈良市三条通りに、観光客向けの着物レンタルや着付けレッスン、さらには変身スタジオなど、“和文化体験サービス”を提供する「わぷらす奈良」もオープンし、インバウンドに人気だ。

―― SC向け業態の出店立地は。
  地域一番のSCや主要ターミナルの商業施設などで、着物が目的ではない一般のお客様の目に留まる立地が好ましい。

―― その理由は。
  昔のきもの専門店では、お客様の大半は目的来店される方であり、店頭の通行量はさほど必要とせず、SCの中でも奥の人通りの少ないゾーンに出店しているケースが多かった。立ち寄って頂いた新規のお客様を「展示会に招待するための名簿集めの対象」としてしか見ていなかった店も多いが、その考え方では呉服市場の縮小は止められない。店頭を通る、まだ着物に触れたことのない新しい層のお客様こそが重要であり、この層が入りやすく買いやすい店でないと絶対に生き残れないと考えている。

―― 来店を促す店づくりは。
  店舗デザインは白を基調とした明るい内装で、いわゆる呉服店独特の古めかしいPOPや垂れ幕などは置かず、現代的でお洒落な空間を作っている。また、ディスプレイの方法も、一目で「実際の着姿」や「価格」が分かるよう“トルソーでの着姿”を多用している。足袋などの実用小物は店先に置かず、着姿を前面にアピールすることで、着物に縁のない方に「着物って素敵だな」「着てみたいな」と思っていただける見せ方にこだわっている。
 価格帯も、正絹着物と帯のセットでお仕立て代込み10万円というお買い得価格に設定し、初心者でも手が届きやすく、分かりやすい設定にしている。こうした取り組みで、店頭での新しいお客様の購入比率は年々高くなっている。お客様の年齢も下がり、20代の女性や、家族連れ、男性など新しい層の来店も増加している。
 また、「プレミアろまん友の会」という月額3000円からの積立金サービスを導入し、より安心でお得に着物を購入頂ける仕組みを作った。入会数は累計3000人を超え、当社の売り上げを支えている。会員には様々な特典も付与されるので、ここからリピーターとなり上得意化するケースも増えている。

―― 出店強化する業態は。
  最新の店舗スタイルを確立している「舞STYLE」「百花」を中心に出店を拡大したい。

―― 「ファーストステージ」は。
  振袖部門の独立をきっかけに立ち上げた業態で、成人式、七五三などライフイベントをフルサポートする写真スタジオとして、当社の中でも中心的な業態に成長している。20店(取り扱い店含む)を展開しており、今後も広い店舗面積が確保できる路面へ出店を進めていく。
 17年6月には『赤毛のアン』の世界観を表現したフォトスタジオ「ファーストステージ アンスタイル」(奈良県広陵町)をオープンしており、庭付き一軒家で普段の子どもの自然な表情が撮れると好評だ。

―― 今後の展望は。
  当社は、ニーズの変化や市場環境の変化に対応する多様な業態を開発し続ける“和のイノベーショングループ”としての事業拡大を目指している。グループの売上高は16年に約20億円、17年は約22億円と順調に伸びており、22年に50億円を目指している。
 今後の成長のためにも、トップリーダーになる人材育成に注力し、5~10年後も変化に対応できるグループにしていきたい。和の文化が広がり、日本人が着物を着ることに自信を持つことで、海外にもその良さを発信していきたい。

(聞き手・今村香里記者/北田啓貴記者)
※商業施設新聞2206号(2017年8月15日)(5面)
 商業施設の元気テナント No.220

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