商業施設新聞
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No.368

「アウトドアブランド」


今村 香里

2012/5/29

 ある日、書店に立ち寄り、女性誌を開くと「女子キャンプ」を提案するページがあった。女子会をアウトドアで開催するものだ。キャンプと言えば、家族ではお父さん、友達同士だとバーベキューができる男子は、女子から注目を集め、高評価を得る(笑)。
 それゆえに、キャンプは男子が欠かせないイメージだったが、最近では「山ガール」と称して登山を楽しむ女子も増えた。実際、私の周りにも山ガールな女子がいる……。この女性誌に掲載されていた「女子キャンプ」のページでは、モデル達が着ているアウトドアのファッションがとてもかわいい。ファッションも良いが、便利なアウトドアグッズや、コップやお皿、テントまでが、とにかくお洒落でかわいいのだ。

 そうした中、アウトドアブランドの「モンベル」が、広島県で2店目となる広島紙屋町店を4月19日に開店、オープンイベントに足を運んだ。同店は、広島市中心部のビル内に2フロアで出店。広島県の旗艦店となる。出店したビルは、オフィス、サービス店などが入居する複合ビルで、地下街シャレオとも直結している。店舗面積は1~2階合わせて、240坪(約790m²)、登山道具を柱に、カヤック、サイクリングなどのアウトドア商品を、オリジナルから他メーカーのものまで約1万種類を揃えている。
 1階は、男性の登山グッズを中心に、ザック(リュックサック)やシューズを充実させた。2階は、山ガール仕様ということか、女性がゆったり買い物できるようにレディースコーナーを設けている。そのほかにも、キッズコーナーや雑貨類、カヤックなどの商品を展開している。2階の奥には「モンベルサロン」を設置しており、トークショー、セミナー、写真展などが開催可能である。加えて、地元の山岳会のミーティングなどにも利用できる。普段は椅子とテーブルを置き、買い物時の休憩スペースとしても活用する予定。今後は、可能な範囲で店内に同スペースの確保を進める方向性だ。
広々としたモンベル広島紙屋町店の店内
広々としたモンベル広島紙屋町店の店内
キッズコーナーも充実している
キッズコーナーも充実している

 当日は、会長の辰野 勇氏が出席され、これまでの自身の登山経験や同社の活動などをこのスペースで説明した。辰野氏は、「商品を購入していただくだけでなく、我々の思いを伝えられるスペースが欲しかった。このような交流スペースをもっと活用したい」と述べた。
 また、ライフジャケットの新製品となる「浮くっション」を講評した。この商品は、辰野氏が東日本大震災の復興支援活動を行った中で考案したもの。普段はクッションとして使用し、災害時には簡単にライフジャケットとなり、津波などの水害から身を守ってくれる。同商品は、東南海地震が警戒されている高知県、和歌山県、三重県などに提案したという。辰野氏は「当社の商品でなくても良い。災害にはライフジャケットの備えも必要」と災害時に役立つアウトドアの知恵や道具の重要性も伝えた。
 このほかにも、サバイバル登山で有名な服部文祥氏のトークショーも開催された。実際滑落した前後の映像や鹿を仕留めて食べるなど、まさにサバイバルで衝撃的だった。「山に対してフェアでありたい」という思いが伝わってきた。

 このオープンイベントの翌週、故郷の香川県に帰省した時のこと。「連休に実家に帰って来るなんて律儀やな。20代の若者なら友達と旅行にでも行かなきゃ」と、祖母とお茶の時間を満喫している私に叔母が一言。母の姉である叔母は、51歳には見えない若々しい外見と精神力を持ち合わせた独身貴族だ。彼女の趣味は「登山」と「海外旅行」。そんな彼女も祖母の体を気遣ってか、若い頃より趣味で出かけることも少なくなった。私がこの日、祖母の家に遊びに行くと、彼女は雨の中で畑仕事をしていた。数年前なら考えられない……。しかも、真っ赤なレインコートで。
 登山が趣味の彼女に、前述の「モンベル」のオープニングイベントに行ったことを話すと、少し興奮気味になった。どうやらモンベルのファンらしい。この日着ていたTシャツも、モンベルのロゴが入っていた。肩の部分は数箇所の穴が開いていて、何十年も愛用しているようだった。彼女いわく、綺麗なうちは登山着、ボロボロになっても畑仕事用にするという。さらに帰り際、もう一着を見せてもらった。さっきの真っ赤なレインコートだ。20年前に購入したそうで、ロゴをよく見ると今と書体が違っており、つい私も興奮してしまった。
 アウトドアウエアは、機能性に優れているので長持ちする。そのうえ、女性誌に掲載されるように、各社ともデザインがお洒落。実は私も、普段着に愛用しているメーカーのものがいくつかある。「女子キャンプ」に「山ガール」。お洒落とアウトドアを両方楽しめるとあって人気のようだ。

 モンベルは、広島紙屋町店のオープン以降、北海道に「大雪ひがしかわ店」「苫小牧店」、また鹿児島県初となる「鹿児島店」をオープンし、直営のモンベルストアは全国で78店(5月上旬時点)となった。海外では、アメリカ、スイス、ネパールに展開している。出店立地は、都心の駅ビル、郊外型のモール、登山口など様々である。しかし、共通している部分は、アウトドアの入り口だ。都心では、アウトドアに出発する際に立ち寄れる交通アクセスの良い場所に、郊外では自然に近い登山口などに出店している。今後も同様に、様々な点を考慮しながら出店していくとみられる。
 同社以外にも、海外メーカーのものなどアウトドアストアを展開する企業が目立つようになったと思う。個人的には注目したい業態だ。

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