商業施設新聞
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No.620

EVの時代に


松本 顕介

2017/8/22

 イギリスとフランスは2040年に、ガソリン車の販売を禁止するそうだ。内燃エンジンの時代が終わり、本格的な電気自動車(EV)の時代を迎えることとなる。

 「EV車だ」。トヨタの豊田章一郎社長が、スポーツタイプのEV車を試乗した際のコメントを新聞記事で見た。このコメントの意味を自分なりに咀嚼した。クルマは前輪駆動、後輪駆動、四輪駆動はもとより、エンジンのタイプ、レイアウトで全く乗り味が変わる。それが特徴になって性格付けされる。だからこそクルマ好きは「あーでもない」「こーでもない」と、論評やらウンチクを語りたくなるのだが、それがモーターで動くのであればみんな同じ、同質化するのではないだろうか。

 私事だが、先日、所有していたバイクを売った。いや、むしろ引き取ってもらったようなもの。そのバイクとは、イタリアのジレラ社製「ランナー」という180CCの2サイクルエンジンのスクーターだ。長い付き合いで、かれこれ18年になる。エンジンから電動モーターへと時代の転換期が目前に迫る中、2サイクルエンジンは時代にそぐわない。2サイクルエンジンは同じ排気量なら4サイクルエンジンと比べてパワーは出るが、燃焼行程でオイルをガソリンと混合させて走るので、燃費効率は悪い。そのため国内バイクメーカーは2サイクルから4サイクルに1990年代ごろに一斉にシフト。そんな2サイクル時代の終わりを告げようかという時に手にしたこのバイクは、2サイクルの動力特性を存分に引き出すことが目的と思われるコンセプト。実際スポーツ性能が高く、当時イタリアではワンメイクレースまで行われていたという。スポーツ性能を享受する一方、エンジン特性が、ある回転数に達すると突然出力が増す、いわゆる「ピーキー」な特性だった。それがまた乗り手のココロをくすぐるのだ。デザインも発売当時、日本車にはない独特のものだった。

この後は海を渡るそうである
この後は海を渡るそうである
 しかし、最近、8000kmで動力部分のクランクシャフトが壊れるという書き込みを発見。さらに、所々にガタや錆が目立ち、すでに交換部品の調達も困難になっていた。寄る年波には勝てず、近年は暖かい時期にしか乗らなくなり、「このまま所有していても」との思いから手放すことを決意したわけだが、エンジンからEV、さらには所有からシェアするという概念が台頭するなか、ずいぶんと時代から取り残された感もある。

 最近、アップルが「iPodシャッフル」と「iPodナノ」の販売を終了したが、CDなどで音楽をためて聴く時代から、今やストリーミングの時代だからという指摘がある。レコード、CD、音楽再生プレーヤー、ストリーミングと音楽の聴き方もスタイルが変わるが、一方でアナログレコードが再注目され、最近ではカセットテープも密かなブームになっているというではないか。過去の遺物と思われていたものが、その魅力を再発見され再び脚光を浴びることも少なくない。数年後、このバイクを手放したことを後悔する日が来るのか。
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