商業施設新聞
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No.363

ルーキーズ


岡田 光

2012/4/24

 (株)ダスキン、(株)フジオフードシステム、(株)鳥貴族、マルシェ(株)など、多くの外食企業が大阪に本社を構えている。(株)きちりもその1社であるが、同社の店舗展開は明らかに他社と違っている。その最たる例が、4月10日にオープンした店舗「新卒ダイニングRookies」(大阪市北区)である。

 同店は、新卒生9人だけで運営する店舗で、「おっちゃん達のディズニーランド」をコンセプトに掲げている。ターゲット層を30~50代のビジネスマンに設定し、ディズニーランドのような、行く前からワクワクする非日常的空間を目指している。店に入ると、「いらっしゃいませー」という元気な声が飛び交い、ホール担当者が満面の笑顔でおしぼりを運んでくる。1階はカウンターとテーブル席で構成され、2階にはテーブル席や座敷のほか、コンセプトを踏襲するかの如く、立ち飲みコーナーが設けられていた。
 メニューも「ROOKIES自慢の特製ローストビーフ」「よだれ餃子」「酒菜の玉手箱」「鮪の炙り ネギ地獄」「羽子板ハンバーグ」「おっちゃまパフェ」など、ユニークな名前が並ぶ。料理だけではなく、個性溢れるサービスも特徴であり、甲子園球場でビールを注ぐアルバイトをしていた女性は、ビールサーバーを背負って生ビールを提供する。また、「私たちのフレッシュ!ワカモレ!」というメニューを頼むと、顧客のテーブルでホール担当者がワカモレを作りながら、ギターの生演奏が行われ、「マル・マル・モリ・モリ」の大合唱が手拍子とともに始まる。

 これを見た読者から「少々ふざけていませんか?」という声が聞こえてきそうだが、当のきちりは大真面目であり、同店は初年度に黒字化を狙っているという。店長も9人の中から選ぶ方針で、5月には新たな店長が誕生する予定だ。
ビールサーバーを背負う店員
ビールサーバーを背負う店員
 さすがに、同店の多店舗展開については言葉を濁したが、13年に入社する新卒生やインターンシップ生を対象に、関東エリアで2店目の出店を計画しているという。売り上げの拡大が見込めるだけではなく、新入社員の教育まで行える同店の存在は、きちりにとっても大きいと言える。

 これまでは、カジュアルダイニング業態「KI・CHI・RI」で店舗数を増やし、着実に業績を伸ばしてきた同社だが、最近はハンバーグ業態の「いしがまや」を関東・関西エリアで展開したり、新業態の「もっちゃん」「新卒ダイニングRookies」を開店したりするなど、積極的な店舗展開を図っている。さらに、今年1月には(株)タニタと業務提携を行い、「丸の内タニタ食堂」に飲食店のノウハウを提供するなど、話題に事欠かない日々が続く。
 最近、同社の店舗を内覧していて気づくのは、外食チェーン店であるにもかかわらず、似たような店が見られない点だ。前述の新卒ダイニングRookiesも、関東エリアではまた違った趣向が味わえるかもしれない。そんな期待を抱かせるのも、同社の策略と言える。

 外食業界はチェーン店が増加し、飽和状態であると言われているが、この“ルーキー”は同業界に新風を巻き起こすかもしれない。そんな予感を感じさせる内覧会であった。

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