韓国で文在寅(ムン・ジェイン)新政権が誕生してから2カ月が経とうとしている。朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾によって誕生した文政権だけに、国民からは様々な期待が寄せられている。特に、前政権が保守系で大手財閥寄りだったことから、文政権は財閥の暗部を改革、是正してくれるという期待が高まっている。
このような世論と新政権の財閥政策によって、韓国経済を牽引する大手財閥企業らが揺さぶられている。文新政権の誕生を契機に、公正取引委員会(公取委)がサムスンや現代自動車、LG、SKの4大財閥グループ専門の調査組織となる「調査局」の復活作業に取り組んでいるためだ。
注目すべきは、文大統領が6月13日、公取委の委員長に“財閥スナイパー”ともあだ名される反財閥の経済学者、漢城大学の金尚祚(キム・サンジョ)教授を任命したことだ。金委員長の公取委は早速6月22日に、百貨店や大型ディスカウント店が中小納品企業に不当行為をして摘発された場合、従来の2倍の課徴金を課すことなどを盛り込んだ「大規模流通業法の課徴金の告示改正案」を行政予告した。
6月13日、公取委の金委員長に
任命状を渡す文氏(右側)
写真提供:韓国大統領府(青瓦台)
韓国で百貨店や大型ディスカウント店を運営する企業は、ロッテをはじめ、現代や新世界など大手財閥系が大半を占めている。
ところで、12年ぶりに復活した公取委の調査局は、金大中(キム・デジュン)政権の1998年5月に本格的な活動を開始した。特に、2000年10月までの2年半の間に、7回にわたって大宇グループを含めた5大財閥の「不当内部取引」(取引に見せかけたグループ間の経営支援など)を集中的に調査。総額27兆ウォン(約2兆7000億円)以上の不当取引の摘発と課徴金2500億ウォン(約250億円)超を賦課する成果を上げたものの、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時の05年、韓国経済に与える影響への懸念から、調査局は廃止された。
韓国では新しい政権が発足するたびに「財閥改革」が叫ばれたが、何度も挫折を繰り返してきた。しかし、サムスンの実質的なトップ李在鎔(イ・ジェヨン)氏が朴前大統領への贈賄容疑で逮捕されるなど不正が明るみに出たことで、国民の不満は極度に高まっている。公取委の金委員長は、調査局の復活のほか、公取委の告発がなければ検察が起訴できない公取委の「専属告発権」廃止なども訴えてきた人物だ。
いまや文大統領の支持率は80%強を堅持している。こうした人気ぶりと金委員長の果敢な行動力や国民の世論を背景に、果たしてどこまで本気で財閥改革に取り組めるのか。その手腕に国民の視線が集まっている。