大手調査会社のIHSマークイットは、7月27~28日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「第33回 IHSディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。本稿では、その注目の講演内容を登壇アナリストに6回にわたって聞く。第3回は「FPD製造技術&設備投資動向」を担当するシニアディレクターのチャールズ・アニス氏に話を伺った。
―― 引き続きFPD業界の投資意欲が旺盛です。
アニス 前回示した製造装置の需要予測を上方修正している。理由は、まずサムスンの有機EL新工場の計画が見えてきたこと。すでに既存の「A3」は満杯に近づき、第7世代の液晶ライン「L7-1」を転換することに加え、次期新工場の建設計画にも着手した。新工場には2019年から製造装置の搬入が開始されるとみている。
次に、液晶10.5Gラインの計画が増加していること。すでに建設中のBOEは2カ所目、CSOTは増設をそれぞれ検討しており、HKCも詳細は未定ながら投資する姿勢を崩していない。これにフォックスコン+シャープの中国工場、最終判断が遅れているものの坡州P10への投資が見込まれるLGディスプレーなどの計画が具体化してくるとみており、計画数自体が増えている。
ちなみに、フォックスコン+シャープは米国に2工場を建設する可能性があるといわれており、これが明確になれば、装置需要見通しをさらに上方修正する必要がある。
―― 中国メーカーのスマートフォン(スマホ)用有機ELの立ち上げ状況は。
アニス BOEは先ごろ成都の6G「B7」工場で試作パネルの点灯に成功した。フレキシブルを量産する予定のため立ち上げのハードルが高く、量産と呼べる投入量に達するのは早くて12月ごろではないか。これと対照的に、天馬微電子は昨年から5.5Gでリジッドの量産を進めており、能力アップは比較的スムーズだとみている。
―― ジャパンディスプレイが苦戦しています。
アニス 投資という観点でいうと、大型投資の予定はない。スマホの有機ELシフトによってLTPSが不振で、稼働率も低下している。今後の投資は有機ELの完成度次第だが、その前にマザーガラスの小さな既存拠点の再編に踏み切る可能性が高い。
―― 5月に米国で開催された、SID(Society for Information Display)に参加されたそうですね。
アニス BOEが量子ドット材料を用いたQLEDディスプレーの試作品を展示し、注目を集めた。サムスンがQLEDと銘打って商品化しているのはバックライトと量子ドット光学フィルムを組み合わせたものだが、今回BOEが展示したパネルは量子ドットを用いた自発光パネルだ。まだ改善の余地は多いが、将来性が高いと感じた。
また、有機EL材料メーカーの米ユニバーサルディスプレイコーポレーション(UDC)がガスを用いたインクジェットで低分子材料を成膜するOVJP(Organic Vapor Jet Printing)技術について講演した。テレビ用有機ELの成膜技術として展開していく予定で、今後は製造装置メーカーとの提携などを探っていくようだ。
―― マイクロLEDディスプレーへの期待も高まっていますね。
アニス 当社もレポートの作成を進めている。アップルがアップルウオッチ向けに量産するのではと噂され、確かに注目度の高いトピックの1つだが、現段階で大きな期待を持つには早すぎる。量産技術の確立に時間を要するとみており、設備投資につながってくるのはかなり先だろう。
(聞き手・編集長 津村明宏)
「第33回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はセミナー事務局(E-mail :
technology.events@ihs.com、Tel.03-6262-1824)まで。