先日、某社のセミナーで東京23区の街づくりについて講演したのだが、資料作りの際に改めて、23区内は開発が多いと感じた。エリアとしては虎ノ門を中心とした港区や渋谷駅周辺が特に多いが、気付いたのは東京都心には再開発だけでなく、『新開発』も意外にあるということだ。
ここでいう再開発は、既存建物の単独もしくは共同建て替えを指す。新開発は、もともと建物がない場所にビルなどを建設することだ。都心はすでに土地がないだけあって、開発はほとんどが再開発になる。例えば銀座地区。4月20日に開業して話題となった「GINZA SIX」は松坂屋銀座店の再開発だ。少々さかのぼり、2016年3月31日に開業した「東急プラザ銀座」もモザイク銀座阪急の建て替えだ。ちなみに、3月15日にグランドオープンした「マロニエゲート銀座2&3」は「プランタン銀座」のリニューアルで、やはり新開発ではない。
必ずしも「新開発は再開発より賑わう」というわけではないが、東京都心においては街づくりのインパクトがあることは間違いない。ただ、新開発には土地が必要だ。建物がひしめき合う東京都心に余分な土地などありえない。と、思っていたのが、線路および駅跡地を活用するといったケースが出てきた。
代表的なのはJR山手線・京浜東北線の田町~品川駅間にある車両基地13haを活用する事業だ。この事業では新駅を整備し、さらに周辺に延べ約100万m²のビル群を建設するといわれている。オフィス、住宅、ホテル、商業、文化施設を導入する複合施設となる。
また、東急電鉄は、東横線の渋谷駅ホームと線路跡地を利用して、延べ11.6万m²の複合ビルを建設する。ちなみに東急電鉄は、池上線の池上駅(東京都大田区)を橋上化して駅ビルも開発する。将来的には、小田急電鉄の小田原線地下化(代々木上原駅~梅ヶ丘駅間)によって生まれる線路跡地の利用も注目されている。
ただ、一方で新開発はオーバーストアと向き合わなければならない。ここで東京都立川市の立川駅の話を少々。立川駅周辺は「伊勢丹立川店」、「立川タカシマヤ」、「ルミネ立川」、「エキュート立川」、「グランデュオ立川」など様々な施設がひしめく。以前から立川駅周辺は西東京エリア随一の商業集積地として知られるが、15年12月に「ららぽーと立川立飛」が開業して商業集積が一層進んだ。街として注目を集めたが、地元の商業施設関係者によると、各施設に客が分散し、好調な施設は少ないという。さらに施設が増えたことで、各施設が独自色を打ち出しにくくなり、施設の魅力の低下につながっているようだ。
つまり新開発は、施設ごとの売り上げが減少するリスクも伴う。新たな施設が純増することで街そのものは賑わい、話題性も増すかもしれないが、回遊性の向上などタウンマネジメントが欠かせなくなるだろう。特に「商業集積が特徴の街に、さらに商業施設を新開発」というように、従前と似た用途の機能を新開発する際は、街としての魅力、集客力が試される。新施設の開発者側としては、魅力的なテナント誘致など、底力が問われるだろう。