商業施設新聞
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No.603

ジーユー的『ファストビルディング』、登場なるか


高橋 直也

2017/4/25

 先日、(株)ファーストリテイリングの2017年8月期中間決算が発表された。ユニクロ事業の好調が目立ち、会社全体としては増収増益となった。ジーユーが減益となったが、同ブランドはオールドネイビーの撤退跡地に出店するなどデベロッパーからの信頼は厚い。これまで順調に成長しており、少しつまずいたものの、再び成長することが期待される。

 ジーユーの特徴といえば、『2000円以下のジーンズ』などの買い求めやすさだ。以前、安さの秘訣を質問したところ、決め手の一つが「普通に使う分には問題ない素材を使っているから」だった。ファーストリテイリングとして言えば、ユニクロほど良い素材は使っていないが、その分価格を下げて低価格を実現している。

 話は変わるが4月上旬、同僚と当社の近くを歩いていると、建設現場が目についた。建築標識を見ると、ある会社の建て替え工事だった。すると同僚がボソッと「建築費が上がってるのに……儲かってるのかな」と漏らした。この時、建築費高騰の話題を以前ほど聞かなくなったことに気が付いた。

 東京オリンピックの開催が決定後、オリンピック会場の建設工事や再開発事業の活発化などを要因に、職人不足、資材不足などが起き、それにより建築費が高騰した。あまりの高騰ぶりに、建設事業が頓挫する例をいくつも耳にした。ただ、最近は「建築費が高くて……」というデベロッパーの嘆きをあまり耳にしなくなった。もしや建築費の高騰は解消されたのかと思い、某デベロッパーに聞いてみたら、「高いままです」と即答だった。むしろ高いのが当たり前になって、話題にもならなくなったようだ。「オリンピックが終わるまでは高いままなんですね」と話を振ってみたところ、「多分もう下がらない」という。

4月20日に開業したGINZA SIXは作り込まれた施設だった。こういう施設もいいが……
4月20日に開業したGINZA SIXは
作り込まれた施設だった。
こういう施設もいいが……
 聞くところによると、オリンピック後はある程度は落ち着くが、そもそも日本全体として労働力不足に陥っており、建設業界でも人手不足が起きている。そのうえ、建設業界はコンビニなどと違い、外国人の採用にはあまり積極的ではない企業もあることが問題に拍車をかけている。そこで、前述のデベロッパーが解決法の一つとして「『そこそこの工事案件』があってもいいのでは」と提案していた。

 日本では、「お客様は神様」な上に「おもてなし」を重んじるため、建設工事もそれはそれは見事に仕上げ、安全性を満たした上で、さらに作り込むという(たまに手抜き工事はあるが)。建築費の高騰が収束しないなら、『そこそこの工事』を施す代わりに、低価格に抑える案件があってもいいのではと話していた。ファストファッションならぬ『ファストビルディング』といったところか。確かに、ジーユーも超高品質の生地を使っているわけではないが、多くの人に支持されている。あらかじめ「『そこそこの建設工事』4でしたが、安全性には問題ありません」ということを告知しているなら、支持する人がいるかもしれない。大手のデベロッパーおよびゼネコンは品質を重視するので、『そこそこの工事案件』には手を出しそうにない。どこか中堅の企業がやってくれれば、広がるかもしれない。
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