3年後に迫った東京オリンピック・パラリンピック、政府が掲げる訪日外国人客数4000万人など、日本国内が“2020年”に向けて様々な動きを見せる中、ホテル不足解消のためにビジネスホテルを中心とした宿泊施設の建設が最盛期を迎えている。商業施設新聞でも、しばしばこのホテル開発ラッシュを取り上げるが、ここ最近の勢いは凄まじいものがある。つい最近までただの老朽化したビルだったものが、ビジネスホテルやカプセルホテルに転換するというケースもよく目にする。こうした開業・開発ラッシュはいつまで続くのかと思うが、他方からは決して明るくない話も聞こえてくる。
感覚的に、15~16年度の前半くらいまでは、どのホテルデベロッパー、オペレーターも明るい未来を想像していたように思う。16年度前半に話を聞いた専門家も「今、ホテルを手がけている事業者で儲かっていない人はいないんじゃないか」と話すほど、業界はバブル状態だった。実際、訪日外国人観光客は毎年右肩上がりで増加しており、2016年(1~12月)は過去最高の約2404万人を突破した。こうした好調なインバウンド需要を背景に、業界がさらに成長を目指すのは自然なことだろう。
だが、その風向きは2016年度下半期から少しずつ変わっていくことになる。インバウンドの人数は増えているのになぜか。その一つに宿泊料金の高騰と民泊の台頭が挙げられる。以前、雪まつりと重なる時期に札幌へ行ったことがあるが、その時は普段の2倍ほどの宿泊料金がかかった記憶がある。需要があるからこその強気な価格設定なのだろう。今の状況もこれと似ているのではないか。
インバウンドで訪日する人の中には、LCCを利用して来る人も当然いる。こうして旅費を節約して旅をする人は、宿泊費もなるべく抑えようとするだろう。特に、買い物目当てではなく、観光や文化に触れるといった“コト”目的で来る人はその意識が強いのではと思う。こうした人たちに好評なのが民泊で、ホテルより比較的安価で宿泊でき、かつその数も飛躍的に増えているという。筆者個人は、民泊という言葉が取りざたされるようになってからも、その影響力に少し懐疑的な視点を持っていたのだが、今やホテル業界にもインパクトを与えるほどの存在になりつつあるのだという。
だが、日本のホテルマーケットの消費者は8割が日本人である。ビジネスでのニーズもある。国内ホテルチェーンもアパグループや東横インなどの大手を中心に積極的な開発を行っており、まだまだ成長を続けている。来たる20年に向け、17~18年度はホテルの開業がピークを迎えるという。特に17年度は、今後のホテル業界を占う重要な年になるという意見もあり、注視する必要がありそうだ。