韓国・仁川国際空港付近では、東北アジア最大級の統合型リゾート施設(IR)がオープンを控えている。1月13日、韓国のパラダイス社と日本のセガサミーホールディングスが合弁で建設する「パラダイスシティ」の第1期1次施設に対する使用承認が下りた。総工費は1兆3000億ウォン(約1300億円)が想定されており、8000億ウォン(約800億円)は韓国系銀行がプロジェクト・ファイナンス(PF)で融資し、4500億ウォン(約450億円)はパラダイス(55%)とセガサミー(45%)が共同投資する。
異次元のアートテインメント(アート+エンターテインメント)複合リゾートといわれるパラダイスシティは、韓国観光産業の発展を牽引してきたパラダイスグループによる45年間のホテルやカジノ運営のノウハウと、セガサミーHDのカジノ事業の経験を集約し、仁川国際空港近隣の永宗島(ヨンジョンド)に建設された大規模リゾート施設である。仁川国際空港の国際業務団地(IBC)に位置する同施設は、敷地約33万m²に造成されるプロジェクトで、2014年11月に着工し、2年2カ月をかけて第1期1次工事を完了した。同施設は6つ星ホテル、グランドボリュームを誇るコンベンションホール、韓国最大規模の外国人専用カジノなどで構成されている。
申壬徹(シン・イムチョル)パラダイスセガサミー統合マーケティング担当常務は「韓流をテーマにした差別化した競争力と体験コースなどを通じて、国内外からの訪問客に異次元の経験と価値を提供したい」と意気込む。同施設は、施設設計をはじめ、コンテンツやサービスなど全ての面で他のリゾートとは比較できない評価を得るために、世界的なパートナーとの協力関係を結んでいる。また、4月の1次オープンに続いて、18年上半期には2次施設を完成させ、複合リゾートとしての規模の大きさをアピールする計画だ。2次施設はショッピングプラザ、高級ホテル、アートギャラリーなど、レジャーやエンターテインメントを網羅する空間で構成される。
パラダイスグループは、企業の利益を社会に還元し、社会とともに分かち合う未来創出を目指している。特に、文化芸術分野の人材を育成するために、中学校、高校、大学を設立し、文化芸術振興のためのパラダイス文化財団を運営するほか、障害者向けのパラダイス福祉財団も設立するなど支援を行っている。世界的な観光企業への飛躍を夢見るパラダイスグループは、12年に打ち出した「ビジョン2020」を土台に、さらなる成長を模索していく計画だ。
だが、韓国の法律では韓国人のカジノへの出入りは固く禁じられている。ソウル市内のホテルにはいくつかのカジノが営業しているものの、外国人だけが利用できる。つまり、カジノの利用対象は限られているわけだ。近年、世界から注目されていた韓流にも一服感がみられる中、パラダイスシティが目指す目標は達成できるのだろうか。前途は未知数である。中国観光客に偏った営業戦略から、多様化への舵取り変更が求められている。