『2016ユーキャン新語・流行語大賞』の年間大賞は『神ってる』だった。筆者は一度も使わなかったため、時代に乗り遅れた感じがする。それはともかく、流行語大賞に影響されて、商業施設新聞で流行った言葉は何だったのか考えてみた。要は紙面によく出てきた言葉だ。1年間分の紙面をめくり直してみた。そして勝手に年間大賞を選定。栄えある大賞は……『ホテル新設』。
ありきたりで普通の言葉だが、とにかくホテル関連の記事が目立った。ラグジュアリーホテル、ビジネスホテル、カプセルホテルなどなんでもござれ。本紙7面のホテル・サービス面だけでなく、再開発ビル、複合施設などあらゆるところにホテルの出店が発表された。
弊社の近くで建設中のホテル。ブランド名が見えるようになった
弊社から歩いて1分ほどの場所でもホテルを建設している。通勤に使う道なので更地のときから何のブランドが出店するのかと注目していた。つい先日、建設地の前を通りかかるとホテルのブランド名が読み取れた。少し文字が隠れているが……なるほど、あのブランドか。
増加するホテルだが、増加しすぎて稼働率が前年度を下回る例も出てきたらしい。つまり需要を食い合っているということだ。カプセルホテルも増えており、そちらもライバルとなっているという。17年はさらに競争が熾烈になるだろう。競争に負けて閉店するホテルが出てきてもおかしくはない。
もう一つ、商業施設新聞的流行語大賞に『取材の中でよく出た言葉部門』を創設。こちらの年間大賞は『服が売れない』だ。中には「リーマンショックの時より服が売れない」と言っている人もいる。景気減退により『モノ=服』より、『生活を良くする=ライフスタイル』を求める人が増加したことなどからファッション店が不調になった。ショッピングセンター内のファッションエリアを食関連のエリアに切り替えるリニューアルもいくつかあった。オールドネイビーが国内撤退を発表したのもファッション不況の印象を強めた。ただ、オールドネイビー跡の区画は引き合いが多いらしく、埋めること自体は簡単だそうな。
ただ、某デベロッパー幹部によるとオールドネイビーは「数字には表れない有力テナント」だったという。オールドネイビーは小さな子供からお父さん、お母さんといった一家の服を揃えることができる。ヤングファミリーが休日に「どこ行く?」「家族の服を揃えるか」「じゃあオールドネイビー行こう」と、商業施設の来館目的にもなっていた。そのため、オールドネイビーの後継テナントも家族層に訴求できるテナントを誘致しなければ、館としてファミリー層の集客が弱くなるという。
来年の今ごろにはオールドネイビーの後継テナントが決まっているだろう。各デベロッパーは家族層に訴求できるテナントを誘致するのか、もしくは別のターゲットを誘致できるテナントを狙うのか。オールドネイビーの後継テナントには各施設の方向性が表れるはずで、17年の商業施設界における注目すべきポイントとなるかもしれない。