新幹線で新大阪から名古屋駅へ、そこで在来線に乗り換え、快速電車に20分ほど乗ると「岐阜駅」に到着する。岐阜駅は、1998年度に高架事業が完成し、2009年には北口駅前広場も整備され、その後、ペデストリアンデッキが設置されるなど、県都・岐阜市の玄関口としてふさわしい都市景観を形成している。岐阜駅の変貌とともに、周辺では市街地再開発事業が本格化し、現在、研究会も含めて8つのプロジェクトが進行中だ。
岐阜の街中を歩いていて、まず驚いたのは商店街の数である。「岐阜駅前中央商店街」「フローレンス柳ヶ瀬商店街」「劇場通り商店街」「レンガ通り商店街」などなど、ユニークな名前を持つ商店街が多く建ち並んでおり、昔ながらの繊維問屋街とともに“まち”の風景に溶け込んでいる。
次に驚いたのは、ホテルの数である。「ダイワロイネットホテル岐阜」「東横イン名鉄岐阜」「岐阜キャッスルイン」「ホテルサンルート岐阜」「コンフォートホテル岐阜」など、数え挙げたらキリがない。これらのホテルは、すべてビジネスホテルである。岐阜駅周辺には、シティホテルが1つもないと聞き、筆者はさらに驚いた。
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岐阜駅西地区第一種市街地再開発事業で完成したビル |
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このような環境下において、8つの市街地再開発事業が計画されているため、当然のごとく、商業機能の導入に各組合は頭を悩ませている。商売を生業としてきた地権者は高齢化が進んでおり、再開発ビルを建設しても、そこに必ずテナントとして入居するとは限らない。だからと言って、外部からテナントを誘致するのは、非常に厳しい状況にある。その理由として、JR岐阜駅と名鉄岐阜駅に出店している物販・飲食テナントの存在が挙げられる。
現在、名鉄岐阜駅には商業ビル「ECT(イクト)」が立地。食品スーパーのパレマルシェを中心に、ベーカリー&カフェのヴィ・ド・フランスなど物販・飲食計18店が出店している。一方、高架事業を実施したJR岐阜駅も、ショッピングモール「アスティ岐阜」を配置。モスバーガーやミスタードーナツ、物販ではマツモトキヨシ、三省堂書店などが出店しており、駅利用者の拡大に一役買っている。
こうした駅周辺の状況により、再開発ビルにおける商業機能の導入は困難を極める。さらに、ホテルがあちらこちらに立地しているため、ホテルチェーンを誘致するわけにもいかず、地権者と再開発コンサルタントは互いに頭を悩ませている。
そして、追い討ちをかけるかの如く、再開発事業における補助金の確保も難しい状況となっている。東日本大震災の発生以降、国の補助金は被害の大きかった東北・関東地域を中心に交付されており、なかなか他の地域まで回ってこないのが実情だ。
しかし、暗い話題ばかりではない。07年9月に完成した岐阜駅西地区第一種市街地再開発事業では、高層階に233戸の住宅を整備したが、即日完売するほどの盛況ぶりであった。写真のとおり、岐阜市の商店街は“シャッター商店街”と化している。しかし、岐阜市中心部では人が住み、人が動いている。街を再生し、こうした人の流れを呼び込む再開発事業は、商店街の救世主となるのか、その行方が注目される。
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シャッターの閉まる商店街 |
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