商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第40回

(株)JR大分シティ 代表取締役社長 関信介氏


開業1年で市街地に賑わい戻す
大分駅で“複合”駅ビル展開

2016/8/16

(株)JR大分シティ 代表取締役社長 関信介氏
 (株)JR大分シティは2015年4月、JR九州として5つ目の駅ビル「JRおおいたシティ」を開業した。商業や駅の賑わいに特化したビルではなく、エリアの賑わいに徹底的にこだわった。街の課題を解決することにチャレンジした施設であり、開業後は大分市街地が賑わっている。同社代表取締役社長の関信介氏に同施設の狙い、動向を聞いた。

―― 大分駅の周辺について教えてください。
  大分駅エリアは、駅北側の1km圏内に県庁や市役所などの行政機関、大手百貨店、商店街などの商業エリア、地場企業、中央企業の支店などが集まるコンパクトシティとして栄えた。ただ、15年ほど前から郊外に大型ショッピングセンターができ、街中が空洞化した。
 一方で、駅南側は国鉄用地跡地として人通りが少ないエリアで、ものさびしい印象があった。さらに線路が南側と北側を分断して、行き来がしづらかった。

―― 課題がある街だったということですね。
  それを解決するために行政やJRなどが一体となり、駅を拠点とした中心市街地活性化事業、鉄道の高架化事業、駅南側を区画整理してマンションが並ぶ都市型の住宅エリアにする事業が動き出した。
 駅ビルもつくることになったが、従来のような駅だけが賑わうビルをつくってはだめだと感じた。市街地の賑わいをつくるためにも様々な人が利用できる複合施設を作りたかった。
 こだわったのがランドマークとしての機能だ。生まれ変わる街のシンボルにすべく、デザインはJR九州のクルーズトレイン「ななつ星」を担当した水戸岡鋭治氏にお願いした。

―― 建物は門のようなデザインが印象的です。
門のようなデザインのJRおおいたシティ
門のようなデザインのJRおおいたシティ
  まずコンセプトとして、生まれ変わる駅南北をつなぐビルをつくってほしいと水戸岡さんにお願いした。デザインは、当時のJR九州唐池社長がラフスケッチした駅南北をつなぐ門のような通路を基にしている。また、大分は、豊後と呼ばれた時代に南蛮貿易が栄え、ザビエルともゆかりが深いが、ザビエルの居城のデザインも反映した。

―― 多くの機能が集まっているのが特徴的です。
  商業だけでなく、プラスアルファを充実させた。水戸岡氏がデザインしたホテル、地上80mの天然露天風呂が楽しめるスパ、さらに駅前広場は駅と商店街や市街地を結ぶ結節機能として、大分市内の路線バスがすべて入る。逆にタクシーは12台しか待機できないようにして人々がゆっくり歩けるように広くした。
 さらに日本最大級の屋上庭園を作った。木々が約1000本あり、水をふんだんに使った。神社、お堂などもあり、全世代がくつろげるようにしている。

―― では商業エリアは。
  施設の構造として横に長いためH&M、東急ハンズ、TOHOシネマズなどを核にした2核1モールにしている。全224店が出店したが、65%は大分市初出店だ。特にファッション系は大分市初が多い。
 商業エリアで特徴的なのは3階だ。キッズ、おもちゃなどニューファミリーをターゲットにしたフロアだが、中央の一番良い場所にフードコートを設置している。什器もこだわっており、ゆっくりくつろいでいただける。3階はフロア全体として集客を牽引している。

―― 大分市はどのようなマーケットですか。
  若い人が多いのが特徴で、人口自体も伸びている。大分駅は九州のJR駅として乗車人員は4位。利用者は20代女性が突出して多い。さらに南側は住宅の整備が進み、以前は2000人ほどしか住んでいなかったが、いまは4000人ほどの住人がいる。今後も増えるといわれており、ポテンシャルの高い駅だ。

―― では、開業から1年間の状況は。
  開業1年の実績は入館者が約2500万人、売上高が約230億円だった。ともに目標を大きく上回った。客層としては近隣に住む人だけでなく、広域から訪れる人も多い。前述のように駅前にバス停を設置したほか、周辺で高速道路の整備が進んだ。交通インフラが整って、遠方からも訪れていただけている。

―― 街中の賑わいは。
  うれしいことに人の流れが市街地にも波及している。シンクタンクの調査によると、大分市街地の人通りは12年と比べて約20%増えた。さらに大分県、宮崎県など多くのエリアから大分市に訪れる機会が増えたという。我々は駅だけが賑わうようにしたかったのではなく、街が賑わう施設をつくりたかった。そのため商店街など市街地の方々と販促、イベントなど様々な連携を重ねてきており、その成果が出たのだろう。

―― 一方で、地震に見舞われました。
  熊本地震の本震が起きた4月16日は当施設の開業1周年の日だった。様々なイベントなどを企画していたが、自粛せざるをえなかった。当施設も地震直後はお客さまがかなり減少した。GWごろから次第に回復してきたが、遠方からの客数はまだ回復途上にある。現在、大分駅前広場を利用して、大分・熊本の自治体などと連携し、観光PRイベントなども実施している。今後も、大分は非常に元気だということをお伝えしたい。

(聞き手・副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2151号(2016年7月19日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.201

サイト内検索