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医機連 国際政策戦略委員会 委員長 依田紀男氏


「日本の医療機器の国際展開~医機連の取組み~」を講演

2016/6/14

依田紀男氏
依田紀男氏
 一般社団法人 日本医療機器産業連合会(医機連)では、日本の医療産業の振興のため、政策提言活動や医工産官学連携などの産業基盤強化、海外事業展開の支援などの国際化推進に取り組んでいる。その一環で、2015年11月16日に第2回医機連メディアセミナーを開催し、国際政策戦略委員会の依田紀男委員長が「日本の医療機器の国際展開~医機連の取組み~」と題して講演を行った(時制、データなどは講演時点)。

◇   ◇   ◇

◆世界の医療機器市場は年平均5~7%成長

 依田氏は、世界の医療機器市場は18年にかけて、年平均5~7%の成長を持続し、13年の3278億米ドル(北米1344億米ドル、中南米144億米ドル、欧州1009億米ドル、アフリカ19億米ドル、アジア464億米ドル、日本298億米ドル)が、18年に4536億米ドルへと、5年で1.4倍に成長する見込みであることを説明した。

◆各国で医療機器登録の整合化を推進

 諸外国での医療機器登録に際しての複雑な手続きや膨大な書類、待ち時間の長期化など、ビジネス立ち上げまでに時間がかかるという課題に対し、医機連では、この申請プロセスの負荷軽減のため、諸外国における本邦既承認品の許認可の整合化と一部免除、できれば審査免除、最低でも欧米の製品と同等審査の要求といった活動を進めている。

 厚生労働省と現地医療機器規制当局との交流会議、医機連とPMDA((独)医薬品医療機器総合機構)との情報交換、医機連によるJETRO((独)日本貿易振興機構)や日本国大使館を通じての現地日系企業による審査簡素化や審査期間短縮といった働きかけの支援など、行政当局と業界の連携と諸外国への許認可整合化を促進している。

 この活動は、多国間医療機器規制整合と二国間医療機器規制整合に分けられ、多国間では、IMDRF(日本、米国、EU、カナダ、オーストラリア、ブラジル、中国、ロシア)における活発な議論がなされている。

◆8カ国(地域)で二国間の交渉中

 二国間は、多国間での整合と比較し早期の決着が期待され、これまでのイラン、ベトナムなどとの覚書締結の実績を背景に、医機連も参加してイランやベトナムと同等の締結内容を目指し、台湾、ブラジル、マレーシア、インドなどとの二国間交渉を進めている。

 二国間の交渉対象(案)は、以下のとおり。▽対象国(地域)(市場規模:百万米ドル、交渉状況、交渉のポイント)の順。
▽ブラジル(5648、継続、医療機器登録審査(GMP査察・認証)期間の短縮)
▽インド(3226、新規、新医療機器法対応・欧米製製品並みの審査)
▽ロシア(6716、新規、医療機器登録審査期間の短縮)
▽中国(16119、新規、医療機器登録審査の簡素化)
▽ASEAN(6カ国計4576〈うちインドネシア673、マレーシア1359、フィリピン279、シンガポール466、タイ1154、ベトナム645〉、新規、規制の適正導入・運用〈タイほか〉)
▽台湾(1801、継続、欧米製製品並みの審査書類)
▽マレーシア(1359、継続、今後の動向に注目)
▽韓国(5109、新規、意見交換のための関係構築・課題洗い出し)

◆マレーシア、ブラジル、インドなどで成果

 マレーシアにおいては、旧GHTF創設国(日、米、加、豪、欧)の承認品に対する審査の簡素化を実現。今後の目標として、登録用書式書類の削減に取り組む。

 台湾では、欧米製の医療機器の薬事申請書類と比べ、日本製品は提出書類量が多く、翻訳の負担が大きいが、どのような条件を整えれば審査書類が欧米製品並みの量となるのか、条件提示を要求し、15年秋から交渉を進めている。

 ブラジルでは、日本の1年程度に対し、3年ほどを要するANVISA(伯国家衛生監督局)の新製品医療機器登録の期間短縮が課題であり、13年10月から活動を展開し、15年度内に新しいルールを確立する目標である。すでに、2年から最大4年へとGMP承認のための監査間隔の延長、5年から最大10年へと製品登録期間の延長、ANVISAが相互協定を締結した他国規制当直の監査・認証情報も活用など一部の規制緩和を実現している。

 インドでは、15年7月1日から日本の薬事承認があれば、ISO13485などの証明書は不要となっている。

 ロシアにおいては、13年1月の医療機器規正法改正により、審査が従来の7~8カ月から1年以上に延び、クラスを問わずに臨床治験が義務化されたが、日系企業の進出数が少ないこともあり、業界活動が困難である。今後は、IMEDA(外資系医療機器団体)の活用や、日本商工会議所内に分科会の設立が必要であるとした。

 タイでは、15年3月に現地で医薬・医療分科会を設立し、キックオフミーティングに118人が参加した。参加企業は、医薬品、医療機器、大使館・公的機関、現地製造、コンサルティング・法律、商社、タイ病院関係、日本病院関係、現地製造(駐在事務所)、人材紹介業、メディア・出版などの分野にわたっている。

 ASEANでは、各国が続々と医療機器規制の導入を果たし、ラオスは、規制はあるものの医療機器登録は義務化されていない。医療機器規制がない国はブルネイのみとなっている。ASEANでは、経済統合計画に関連し、14年にIMDRF(GHTF)規制をもとにした整合規制「AMDD(Asian Mdical Device Directive)」が成立したが、各国への導入時期・内容は各国の判断に委ねられている。

◆ASEANの統一規制に期待

 ASEANについては、AMDDのメリットとして、各国の足並みが揃えば、1つのフォーマットのみに沿って準備が可能となる。ただし、細部でEU-MDD・IMDRF規制と細部で異なったり、ASEAN各国の登録も継続するため、各国ごとの個別対応の必要性や、開発文書提出の必要性などの注意点がある。また、AMDD・CSDTを導入していないASEAN諸国での承認・販売製品に関しては、メーカーの負荷が大きくなる。
 なお依田氏は、TPP交渉においては現在、日本市場に入ってくる医療機器には関税がかかっておらず、日本から輸出する場合は関税が課せられるが、TPPではその輸出に際しての関税が撤廃されることや、ASEAN以外の国の規制について、サウジアラビアでは旧GHTF創設国(日、米、加、EU、豪、12年12月に解消)の承認・認証が医療機器登録申請の条件であること、チリは今のところはほとんどが登録不要であること、南アフリカは今のところ登録が不要であるが、現在、医療機器法の導入検討中であることを紹介し、講演を終えた。

(この稿続く)
(本紙編集長 倉知良次)

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