商業施設新聞
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No.542

銀世界・博多より


松山 悟

2016/2/2

 琴奨菊が日本人力士として10年ぶりに優勝した日、九州は大寒波に覆われ、九州全域が銀世界となっていた。琴奨菊の出身地である福岡県柳川市はもちろんのこと、桜島のある鹿児島市も5年ぶりに雪が降った。長崎市は100年余の観測史上最高の積雪を記録したという。筆者の勤務する福岡市内は、例年山沿いに積雪があるくらいで、都心は海からの風で吹き飛ばされ積もることはない。今回の大寒波は天神も博多駅も雪化粧をした。

 雪が降って喜ぶのは子供だけかと思っていたが、アパレル関係者、家電専門店なども喜んでいるようだ。寒さが続けば冬物衣料の売り上げが伸びるし、石油ストーブが今、飛ぶように売れているとテレビのニュースで流れていた。冬商品を取り扱う企業は、一息つけるかもしれない。

 大雪で泣いているのは、やはりサラリーマン。交通マヒのなか出勤すれば、会社に着くころはくたくたになる。仕事帰りに屋台で一杯やろうにもこの天候では屋台が出ない。そういえばこの間、屋台で居合わせた客が、「インフルエンザが流行らないかな」と言っていた。物騒なことを言うなと思っていたが、その人は製薬会社のプロパーだそうだ。風邪が流行らないと薬が売れないという。

4月21日にオープンする「KITTE博多」完成イメージ
4月21日にオープンする
「KITTE博多」完成イメージ
 博多駅前の博多郵便局跡地に、「博多マルイ」が核店舗となる「KITTE博多」が4月21日にオープンすることが決まった。消費者にとっては楽しみがひとつ増えたわけだが、天神の商業者にとっては心配の種だ。これまでは天神と博多駅が一丸となって、福岡市の商業を盛り上げることができると表向きは余裕を見せていたが、ここに来てレストランの拡張、テナントの入れ替えなど天神地区の動きが活発になっている。

 空港や港が一面真っ白になっているのを見て、日程変更を余儀なくされたインバウンドも多いだろう。せっかく九州観光を楽しみにして来日したろうに、この積雪を見てなんと思うのか。国によって、がっかりする人もいれば、雪を初めて見たと喜んでいる人もいよう。

 見方や立場が違えば、人の意見も変わる。世の中の動きは相撲の勝ち負けほどわかりやすくはない。一面の雪景色の向こうにあるものを読者に伝えることも新聞記者の仕事なのだと、いつ来るかあてのない電車を待ちながら自分に言い聞かせていた。
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