電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第168回

「佐賀県唐津を世界のコスメティック産業の集積地にしてみせる!!」


~ブルームの山﨑信二代表が語る日本の農産物活用の新戦略~

2016/1/29

 「フランスのコスメティックバレーは世界最大のクラスターだ。世界の化粧品産業は30兆円以上はあると思われるが、何とこのクラスターからの出荷額は15兆円にのぼり、要するに世界の半分を占めている。その日本版となるジャパン・コスメティックセンターは何と佐賀県唐津に存在するのだ」

(株)ブルーム 代表取締役  山﨑信二氏(ジャパン・コスメティックセンター代表理事も兼任)
(株)ブルーム 代表取締役  山﨑信二氏
(ジャパン・コスメティックセンター
代表理事も兼任)
 にこやかな笑顔で優しくこう語るのは、一般社団法人ジャパン・コスメティックセンターの代表理事を務める山﨑信二氏である。山﨑氏は明治30年から続く老舗の料理屋である「あかみず」の4代目であるが、この家業を奥様に任せ、自らは(株)ブルーム(佐賀県唐津市浜玉町浜崎1901-457、Tel.0955-70-4701)を起業し、化粧品の成分分析から輸入代行までを幅広く扱うカンパニーとしては日本最大の存在に育て上げた。同氏が起業するきっかけとなったのは、アパレル、化粧品など輸入品の内外格差がひどすぎる、という思いから輸入商社を作ったことから始まる。

 「当初は時計、ファッション品などを大手デパートに納めていた。その後化粧品を扱い始めたが、薬事法違反という手痛い目にあった。そこでこれをクリアするためにラボを持つことを考えた。驚くべきことに当時の化粧品の規制成分100成分のうち、50成分はほとんど分析されていないことが分かった。そこで化粧品の成分分析ができる安全安心の輸入代行であればビジネスは成立すると考えたのだ」(山﨑社長)

 ブルームは創業して25年となるが、海外メーカーの評価は非常に高く、化粧品メーカーとの取引は全世界で300社に及ぶという。現状の取引先トップはコスメ王国のフランスをはじめとするEU、2番手は米国、3番手はアジアとなっている。取扱量は40億~50億円であり、大手数社を除き日本メーカーからも受注しているという。ちなみに数年前までの取引先トップは韓国であった。化粧に命を賭ける女性が多いといわれる韓国は、美容整形でも世界に知られており、良いお客さんであったのだ。

 「日本の芸能界などで女性タレントやモデルを選出する場合、ほとんどは顔を見て決めている。しかしながら、韓国をはじめとする諸外国では圧倒的にスタイルで決めている。なぜならば、顔はいつでも整形できるからだ」(山﨑代表)

 ブルームのラボは、高度で正確な分析能力を持ち、低コストかつハイスピードで処理できることが売り物だ。分析、管理、物流の一貫体制を確立していることも、ユーザーに受けている要因なのだ。スタンダード機器をカスタマイズして使っており、今春着工をめどに延べ150坪の新棟を建設し、生産ラインを拡張する計画も立てている。ところで、山﨑氏は日本の女性たちのファッションセンスや化粧センスは世界No.1だと評価し、次のように述べるのだ。
 「先端ファッションの世界ではいまやパリ、ミラノをしのいで東京コレクションが世界の先頭を走っている。この分野では世界を巻き込む日本ブームが起きている。かわいい、という日本語は今やヨーロッパではデファクトであり、誰でも知っている。平安朝の十二単衣を見ても、その微妙な色使いはまさに世界を驚かせ始めているのだ」(山﨑代表)

 山﨑氏の夢は、自分が生まれ育った唐津を日本版のコスメティックバレーに持っていくことなのだ。フランスなどEUから現在の物流拠点であるシンガポール、香港までは40日もかかる。しかして唐津を戦略拠点とすれば、たったの4日で香港、シンガポールまで行けるのだ。エネルギーコストは10分の1、物流コストは3分の1まで下がる。
 「私は唐津コスメ構想を提言している。日本で取れた農産物を使った安全安心の化粧品およびその材料の拠点をこの地に集積したいと考えている。すでに日本最大の化粧品原料メーカーである岩瀬コスファが進出を決めている。また、トレミーという会社も進出した。さらに大手化粧品メーカーが唐津進出を検討中だ」(山﨑代表)

 唐津港は大陸との貿易が古代から盛んなところであり、江戸時代に長崎に出島が作られる前は九州No.1の港であった。古くは有田焼、最近では石炭などの輸出で栄えたが、今では地盤沈下している。唐津港の復活の原動力はコスメにあり、とする山﨑氏の構想はすばらしいといっていいだろう。

 山﨑氏によれば、自然の農産物をフル活用するのが世界の化粧品の主流であるが、日本はケミカルに行ってしまったために大きく立ち遅れてしまったという。ただし、化粧品を作るケミカル技術はダントツ世界一と評価しておられる。これからは日本が誇る安全安心の農業と、世界ステージに出て行く化粧品産業をクロスオーバーさせる必要があるというのだ。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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