広島地下街開発(株)(広島市中区基町地下街100、Tel.082-546-1070)は、広島市の中心市街地である紙屋町周辺で、地下街SC「紙屋町シャレオ」(以下シャレオ)を運営している。同社代表取締役社長の片平靖氏にSCの特徴や展望など話を聞いた。
―― 開発の経緯から。
片平 シャレオの周辺は、広島城跡があることから、古くから城下町として栄えてきた場所である。現在も県庁、市民病院などの公益施設や、金融機関、大手企業の支店などが集積するほか、百貨店、家電量販店などの大型商業施設も軒を連ねており、都心の一等地に立地している。
こうして街が発展していく中で、自動車の渋滞緩和を図るため、郊外の住宅地と中心市街地を結ぶ新交通システム「アストラムライン」の整備による交通結節点機能の強化や、歩行者の利便性および安全確保の観点から地下歩道を整備することになった。これに伴い、地下道の有効活用として、都心の魅力的な空間形成を目的に地下街の開発を求める声が広島の経済界を中心に上がった。地下街の開発にあたり、広島市を中心に県や民間企業が出資し、第三セクターとして当社が事業主体となって建設が本格化した。2001年4月にシャレオが開業し、14年間当社が運営している。
―― シャレオの概要を。
片平 紙屋町交差点の地下を中心とし、東西南北に十字に延びる地下街である。店舗面積は7120m²で約80店のテナントを集積。テナントの売上高は14年度約57億円で、3年後に60億円を目標に掲げている。このほか、7つの広場と地下歩道1万2480m²を有している。
―― SCの特徴は。
片平 交差点の真下にある中央広場は、大理石をあしらった高級感ある広々とした空間で、公的なものから民間のものまで定期的にイベントを開催している。いつも人々で賑わっており、集客装置の役割も大きい。
テナントの配置は、通りごとに立地の特性を活かしてゾーニングしているのが特徴だ。南通りは、商店街など繁華街からの入り口となるため、顔となる旬のアパレルブランドを、アストラムラインの終点駅とつながる北通りには、通勤時に便利な生活雑貨、ドラッグストア、コンビニなどを配置している。オフィス街に近い東通りには、書店、軽食店など、原爆ドームから近く観光客が多い西通りの奥はグルメストリートを配置している。
―― 最近の取り組みは。
片平 開発当初はおしゃれな地下街を目指し、20代の女性をメーンターゲットに旬のアパレル店を多く導入していた。しかし、アパレル業界の環境変化や郊外型SCの開発などで、アパレル店の数は10年前と比較し4割程度減っている。
最新のコンセプトは〝おしゃれで便利な心地よい空間〟とし、通勤通学者に加え、高齢者や子育てする女性など幅広い層の方に利用していただけるSCを目指している。以前より雑貨店やサービス店の比重も高くなり、通勤時に便利なコンビニを2店導入するなど売り上げにも効果が出ている。さらに広場や通りにベンチを多く設置し、ゆったりくつろげる空間になっている。将来的には植栽も行い、癒しや快適性を追求し、心地よい空間づくりを行っていく方針だ。
―― 課題は。
片平 市民球場の移設に伴い、西通りの集客力が弱まっている。対策として、目的来店していただけるようなヘア、ネイル、脱毛などの美容系サロンを導入している。まだ数区画空きがあるが、通りのゾーニングを考慮しながら魅力あるテナントの誘致を行う。
今後は西通りの出入り口に新ビルが開業する予定で、ここには原爆ドームが眺められる展望台や飲食店、オフィスが入居するようだ。シャレオにも観光客やオフィスワーカーが取り込めると期待している。販促や案内サインの連携などができないか、新ビル側に連携を打診しているところだ。
―― 展望など。
紙屋町シャレオの中央広場では
様々なイベントが開催されている
片平 現在は紙屋町・基町の商業施設13事業者が連携し、エリアの回遊性を高めるためのPRを共同で行っている。こうした取り組みを八丁堀界隈や、さらには広島駅周辺などとも連携し、大きなエリアでの回遊性が必要だと感じている。広島の経済を牽引するのは、中心部が一体となって賑わうことが大事である。広島の都市装置の一つとして、これからも、街づくりに寄与できる運営を心がけたい。
(聞き手・今村香里記者)